カギを握る場所、甘味処「竹もと」のモデルは? 「虎に翼」がより面白くなる7つのポイント
6:法服にも注目
第8回から10回、寅子は男装の同級生・山田よね(土居志央梨・31)たちとともに民事訴訟を傍聴した。夫の暴力に耐えかね、離婚裁判を起こし、1審で勝訴した妻が、夫の家に残した母親の形見の着物などを返してもらいたくて起こした訴訟だ。寅子は傍聴席から妻に対し、「がんばれ」と声を掛けた。 原告である妻の弁護人はお笑いコンビ・シソンヌのボケ役・じろう(45)、被告の立場の夫を弁護したのはツッコミ役の長谷川忍(45)。民事なので2人とも弁護士。その法服の刺繍は「白色」。潔白を表す。 栗原英雄(58)が演じた裁判官の法服の刺繍は「深紫色」。尊厳を象徴している。今後、刑事裁判も登場するが、その場に出てくる検事の法服の刺繍は「深い緋色」これらは1890(明治23)年の勅令など史実に基づいている。 ナレーションは現代の言葉を使い、分かりやすくしているが、美術は本物志向。法廷内も刑事裁判のときは裁判官と検事の位置が高く、弁護士は低くなる。戦前の不公平な裁判の一端が垣間見られる。 ちなみに裁判官以外の法服は1947年に廃止され,検事と弁護士はバッジの着用のみとなった。
7:大テーマを表すファーストシーン
ファーストシーンでは、1946(明治21)年に公布された日本国憲法の第14条を寅子が新聞で読み、肩を振るわせた。 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」 この物語の大テーマである、性別を含めた全ての不平等の解消と多様化の尊重を表していた。 第11回からの第3週では寅子の仲間4人がどうして法曹界を志したのかが分かる。よねの男装の理由も。男女同権も多様化も程遠い世に苦しんだからだった。 高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ) 放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。 デイリー新潮編集部
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