その多様性、逆効果かも?チームが失敗しないための方法
変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。 ● 均質的なチームが持つ平時の強さ 会社内で自由にチームを構成していいとなった場合、皆さんなら何を基準にどのようなメンバーを選びますか? 同じ背景や価値観、スキルを持つ「均質的なチーム」は、計画に基づいた作業を効率よく進めるのに適しています。例えば、高度成長期において、日本企業は均質的な組織運営によって製造業で世界一の地位を築きました。このようなチームは、日常的なオペレーションや平時の業務改善には大きな強みを発揮します。 しかし、予想外の事態に直面したとき、その強みが弱点に変わることがあります。均質的なチームは、同じ視点や考え方に固まりやすいため、新たな視点や柔軟な対応が求められる場面では、適切な解決策が導き出しにくいのです。 ● 多様性の光と影 このような局面に対応するには、異なるバックグラウンドや価値観を持つメンバーが集まり、多様性を活かして斬新なアイデアを生み出せるチームが重要となります。特に予測困難な状況下では、異なる視点があることで画期的な解決策が生まれることがあります。 一方で、多様性が必ずしも良い結果をもたらすわけではありません。多様性のあるチームでは、メンバー間の意見が食い違いやすく、コミュニケーションミスやトラブルも発生しやすくなるため、平均点が低くなる傾向があります。 多様性が効果を発揮するのは、有事や不確実な状況で新たな視点が求められる場面です。突発的な問題の解決や長期的な価値創造においては、その存在が大きな力となるのです。そのため、変化の激しい現代のVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代において、多様性は企業が新たな道を切り開く原動力の一つとなるでしょう。 ● 多様性を活かす「二強対立モデル」の構築 では、多様性の利点を活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるにはどうすればよいのでしょうか?それは、「二強対立モデル」を構築することです。このモデルでは、あえて二つの勢力を均衡させることで、多様性を効果的に活用します。 例えば、年齢構成で50代が多い職場に20代のメンバーを増やすことで、年齢による偏りを緩和します。このように拮抗する勢力をつくることで、その他の少数派も自然と意見を言いやすくなります。 ただし、多様性を強化すること自体が目的ではありません。重要なのは、多様性が生む新たな視点を具体的な成果に結びつけることです。議論の場で建設的な反対意見が生まれるかどうかが、チームが多様性を活かしているかどうかの一つの判断基準となります。 多様性は適切にマネジメントされて初めて効果を発揮するものです。目的に応じたチーム構成を意識し、多様性を活かせる仕組みを整えましょう。 アジャイル仕事術では、多様性を活かしつつ成果を生む方法をはじめ、働き方をバージョンアップする方法を多数紹介しています。 坂田幸樹(さかた・こうき) 株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO 早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA) 大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。
坂田幸樹