欧州最大ホテルチェーンが、テニス「全仏オープン」とタッグを組んだワケ
110カ国で5700以上のホテルを展開する世界的ホテルチェーンの仏「アコー」。 同社は4月、傘下のホテルブランド、メルキュールとグランドメルキュール22軒を一斉開業した。現在、多くのインバウンドの受け皿となっている。 【写真を見る】アコーのイベントに出演した松岡修造と錦織圭 10月にはテニスの4大タイトルの1つ、全仏オープンを主催しているフランステニス連盟(FFT)が、ジュニア大会「Roland-Garros Junior Series By Renault」を、初のアジア大会として東京で開催した。このタイミングでアコーの別ブランドのプルマン東京田町が、FFTとコラボ。イベント開催やコラボルームを用意するなど新たなビジネスを展開している。このようにタッグを組んだ背景には、アコー、FFT両者の「日本市場を拡大させたい」という思惑が一致したことがある。 アコージャパンのディーン・ダニエルズ社長と、FFTのマーケティングとビジネス開拓の国際部門でトップを務めるアイメリック・ラバステ氏に話を聞いた。
地方誘客に成功 都心のマーケティング戦略は?
「リブランドする前と比べて客室稼働率も、客室単価も大きく上がりました。7、8、9月は本当に好調でした」 ダニエルズ社長は、一斉開業後の手応えをこう話す。 以前のインタビューで、地方における20を超えるホテルの同時開業は、オーバーツーリズムの解消にもつながると話していた。「稼働率は2桁ほど上昇しているホテルが多く、地方にあるメルキュール、グランドメルキュールをたくさん利用してもらっています。国内の客はもちろん地方に行きますし、完璧とまでは言えないものの、インバウンドの地方への誘客も進んでいます」。稼働率が大きく上がったのは八ヶ岳、那須、残波岬、淡路島のホテルだそうだ。 リブランドによって稼働率と客室単価を向上できた理由には、適切な広告展開ができたことがある。インバウンド客は半年前、国内の顧客は約90日前から旅行の計画を考えることが多い。今回は2023年7月に一斉オープンのリリースを出し、2023年9月に予約開始のリリースを発信。十分な告知期間を設けられたのだ。 「場所と時間を集中して打ち出すことにしました。例えば、山手線や大阪環状線の電車内に、動画広告を出したのですが、効果がありました」と話す。ほかにも梅田駅、羽田空港、伊丹空港でも同様の広告を掲出した。 アコーはリブランドする前のホテルスタッフを継続して雇用しているため、アコーのホスピタリティの在り方を学んでもらう必要もあった。「外資系ホテルとして、慎重にやらないといけない、強引にやってはいけないと考えていました。トレーニングが始まった際には一部、まだ旧大和リゾートのホテルとして営業していたので、最初はオンライントレーニングを実施し、メルキュールの文化を理解してもらいました。2024年2月からはホテルがクローズして工事に入ったので、アコーの育成チームが全国を回り、トレーニングを実施しました」 日本のおもてなしとアコーのホスピタリティに共通点はあるのかと聞くと「あると思います」と話す。アコーでは社員を、ハートとアーティストを掛けた「ハーティスト」と呼び、同社の接客指針であるハーティストウェイでは、自分が顧客ならどのように接客してほしいのかを考えるのだという。顧客のボディラングゲージを見ながら接客していくのだ。 「例えば、子ども連れのお客さまがチェックインするときに、受付担当とは別のスタッフが子どもの相手をすれば、親が慌てずにゆっくりチェックインできます。ちょっとしたことですが、ストレスの一部を取り除く環境を作りだすのです」