チェコ特使インタビュー:欧州におけるエネルギーの「脱ロシア化」の現状と展望
4月下旬、チェコ共和国エネルギー安全保障担当特命大使ヴァーツラフ・バルトゥシカ氏が、日本のエネルギー関係省庁や企業関係者らと会談するため来日した。都内で単独インタビューに応じたバルトゥシカ特使に、チェコのエネルギー脱ロシア化の現状を聞いた。 ※※※ ――チェコにおけるエネルギーの脱ロシア化はどの程度進んでいますか。ロシアによるウクライナ侵攻以前、チェコはロシアから天然ガスや核燃料を輸入していました。 たしかに2022年2月まではロシア産のガスを輸入していました。なぜなら天然ガスに関してチェコは基本的にドイツ市場の一部となっており、ドイツは主にロシアからガスを輸入していたからです。 しかし、2022年8月までに、ドイツもチェコもロシア産ガスの利用をゼロにしました。わずか半年間で他の供給元に切り替えることができたのです。チェコは2022年にオランダで、昨年にはドイツで、LNG(液化天然ガス)のターミナルを借りる契約を結びました。 EU(欧州連合)にはまだロシア産のガスがパイプライン経由で、あるいはLNGの形で供給されていますが、私たちはそれを問題視していません。なぜならロシアの天然ガスに対する制裁は課されていないからです。ロシアの石油に対する制裁はありますが、天然ガスに対する制裁はありません。その点は日本と似ていると思います。日本もまだサハリンからLNGを輸入しています。 ただしロシアは天然ガス市場において、もはやプライスメーカー(価格決定者)ではありません。ロシアはプライステーカー(価格の設定に関与できない市場参加者)であり、それは原油市場においても同じです。原油価格はサウジアラビアが決め、欧州向けの米国産ガス価格は米国、ノルウェー、カタールが決めています。 ――チェコは昨年、核燃料の供給元もロシアから米国とフランスに変更しました。すでに完全に切り替えたのですか。 いえ、完全な切り替えにはまだ時間がかかります。通常、原子力発電所では毎年4分の1ずつ燃料を交換します。私たちは今、非ロシア産の燃料を購入し、交換を始めた段階です。完全に入れ替えるにはあと3年かかりますが、十分な供給があり貯蔵も十分なので心配はありません。 ――チェコの電源構成についてお聞きします。2020年のデータでは石炭発電40%、原子力発電40%となっていますが、将来的にどう変わっていくのでしょうか。 原子力と石炭がそれぞれ40%ずつ、残りは15%が再生可能エネルギーで、水力がだいたい5%です。発電に占める天然ガスはごくわずかで、現状はほとんどが原子力と石炭といえますが、石炭は段階的に、おそらくはこの10年で廃止され、他のものに置き換えることになります。 ――石炭は天然ガスによって置き換えるのですか。 原子力発電所の新設には少なくとも10年、あるいは15年かかります。ですから、早く代替したいのであれば、天然ガスにする必要があります。あるいは、近隣諸国から電力を輸入することもできるでしょう。