富岡製糸場が世界遺産に決定 次の候補は?
2017年の登録推薦は
その次、2017年の登録推薦については、どうか。 暫定リストに記載された候補のうち、自治体がその意思を明確にしているのは、大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」と新潟県「佐渡鉱山の遺跡群」。いずれも専門家による委員会を組織し、資産の管理や景観保存などについて方策を構築中という。過去、国内選考に敗れた「北海道・北東北の縄文遺産群」と福岡県の「宗像・沖ノ島と関連史跡群」も官民で機運を盛り上げている。ちなみに、1000件に迫る世界遺産のうち先史時代の遺跡は30件に満たない。1万年の長きにわたる歴史に光を当てたいと「北海道・北東北~」を有力視する声もある。
候補選定や登録へ課題も
これまで、世界文化遺産への推薦には文化財保護法により保存・管理されていることが条件だった。しかし、2012年の閣議で、稼働中の施設にとって部品の交換まで制約される同法の適用は非現実的、世界遺産への推薦も困難だとして、現役の施設には港湾法や景観法など文化財保護法以外の法律を適用することになった。また、文化庁(文化審議会)だけでなく、内閣官房が組織する有識者会議でも候補選定を行えることに決まった。ただし、それぞれが異なる施設を選んだ場合の対応は決まらず。 2015年の推薦候補選びでは、文化庁が「長崎の教会群」、有識者会議が「明治日本の産業革命遺産」推しと分かれ、最終的には、裁定を一任された菅官房長官が「明治日本の~」を選んだ。その際には、「純粋な学術的根拠に基づく判断なのか」と疑問視する意見があり、「釜石市の施設が含まれ、震災復興にも貢献する」との見解にも「政治目的とは切り離して考えるべき」との声が上がった。 ユネスコの審査は年々ハードルが上がっている。 イコモスを説得するためにも、「明治日本の産業革命遺産」については、萩の城下町や幕末の工場群、炭鉱跡や重工業施設に至る多様な構成資産について、整合性のあるストーリーを練り上げることが必要だ。菅官房長官は「民間企業で稼動中の大規模施設の登録は、文化遺産の保全に新たなモデルを提示する」と胸を張ったが、資産を保有する企業と自治体との調整も課題。 先行きに楽観はできないが、来年5月と見られるイコモス勧告では、ぜひよい報告を聞きたいものだ。 (文責・武蔵インターナショナル)