セナもそう、バッジョもそうだ。心を折らず、自分自身に矢印を向け続けること。心に染みた菅原由勢の正直で勇気ある発言
本番までにどんな変化が起こっても不思議はない
信じた先にしか、道は開けない。その真実は、先人たちが教えてくれている。 2008年のEUROで44年ぶりの戴冠を果たしたスペインで、MVP級の働きを披露したマルコス・セナは、もともとは“代役”に過ぎなかった。予選の出場はわずか1試合。彼のボランチのポジションにはダビド・アルベルダという絶対的な存在がいたため、お声すら掛からなかったのだ。 しかし、そのアルベルダがコンディション不良で大会を招集外になったことでチャンスが到来。周囲の不安をよそに、このブラジル出身のMFは、シャビとともに見事に中盤を仕切ってみせたのである。 もう少し時代をさかのぼれば、1998年フランスW杯のロベルト・バッジョの復活劇を思い出す。ミランからボローニャへ“都落ち”し、一時は「もう終わった選手」と見なされていた当時31歳のバッジョだが、大会直前のシーズンに22ゴールを挙げるハイパフォーマンスを披露し、イタリア代表メンバーに滑り込む。ただし、その条件は「サブの立場を受け入れること」。背番号10は若きファンタジスタ、アレッサンドロ・デル・ピエロのものだった。 それでもチリとの初戦、故障を抱えていたデル・ピエロに代わってスタメン出場を果たしたバッジョは、鮮やかなダイレクトパスでクリスティアン・ヴィエリの先制点をアシストすると、1点ビハインドの85分には、エリア内の相手DFの腕に“狙って”ボールを当ててPKを獲得。これを自ら沈めてみせた。 北中米W杯まで、あと1年半。おそらく日本代表は余裕で出場権を手にするだろうが、ここから本番までにどんな変化が起こっても不思議はない。今は控えに甘んじている選手たちも、あるいは招集すらされていない選手の中からも、セナやバッジョのような主役が生まれる可能性はあるのだ。 心を折らず、自分自身に矢印を向け続けていれば、きっと。 文●吉田治良
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