水俣病救済、まず裁判で 「つるし上げ」発言を重ねて謝罪 熊本知事・就任1カ月インタビュー
熊本県の木村敬知事が16日で就任から1カ月を迎えるのを前に、西日本新聞のインタビューに応じた。水俣病被害者の発言遮断問題にも言及し、「水俣病」に今後どう向き合っていくかについて語った。 水俣市で1日に行われた伊藤信太郎環境相との懇談で被害者側は、環境省職員から発言を遮断され、抗議した。同席していた木村氏は10日の定例記者会見で、抗議の状況を「つるし上げ」と表現、訂正していた。インタビューでは「(被害者側は)これまでのつらく、やる方ない思いをぶつけ、厳しく指摘し、怒りをもって抗議していた。ああいう表現になってしまって本当に申し訳ない」と重ねて謝罪した。 今回の混乱を招いた要因として、同省と被害者団体との事前の意見交換が不十分だった点を挙げ、「国も県も拡大責任、加害責任を有している。(被害者側との)向き合い方をしっかりしていく」との認識を示している。 発言遮断問題で水俣病が再注目され、国の姿勢も改めて問われることになった。「水俣病への理解が深まり、国立水俣病総合研究センター(水俣市)の機能強化などにつながっていけば」と願う。ただ政治主導による新たな救済策については否定的で「まずは裁判で救済を求めている方々の症状などが整理され、現行法では救済できないとなれば、その後の議論が定まってくる」と強調する。 その裁判には被告としてどう臨むのか。「裁判を引き延ばすようなことは絶対にするべきではない」とする一方、患者認定の基準が極めて厳格なことについて「いわゆる劇症型で亡くなった方々もいて、何をもって水俣病というのか、判決も割れていると思う」と述べ、推移を見守る姿勢を示した。偏見、差別に対しては「毅然(きぜん)とした対応を取っていく」とした。 水俣病の公式確認から68年。被害実態の解明に向け水俣病被害者救済法(2009年施行)が定める住民健康調査はいまだに実施されていない。木村氏は「可能な限り早く調査をしてほしいと県は一貫して訴え続けている。恣意(しい)的ではない、納得できる科学的な調査になるよう訴えていきたい」と話した。 (藤崎真二)