なぜヴィッセル神戸は突然社長を交代させたのか?
球際の激しさや前へ出ていくアグレッシブさなど、試合内容ではポジティブな変化も見られた。ただ、ミーティングの席で三木谷会長が流した涙で発奮したといっても、それだけで勝てるほどサッカーは、そして勝負の世界は甘くはない。 リーグ最少の総得点10にあえぐ決定力不足。FW大迫勇也をはじめとする故障離脱者の連鎖。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の就任後で減少傾向にあるとはいえ、総失点21はリーグで3番目に多い。ベテランや中堅を突き上げる若手の台頭も見られない。何よりも開幕から低迷を続けるチームは自信を失い、焦りを募らせている。 チーム内に山積するさまざまな問題を考えれば、社長の交代で状況が好転するとは考えにくい。だからといって特効薬も見当たらない。考えられるのは補強だが、夏の移籍ウインドーが開くのは7月15日。神戸はそれまでに6試合が組まれているが、このまま低空飛行が続けばJ2降格圏からの脱出へ向けて手遅れになりかねない。 神戸のオーナーは楽天グループであり、楽天グループの総帥である三木谷会長が最大の実権を握る。未曾有の不振は誰かが辞任したからといって、すぐに解決するような問題ではない。しかし、もし三木谷会長が「Viber」で発した「けじめ」が尾を引いた挙げ句の唐突な社長交代ならば、余計な労力が費やされた人事としか思えない。 再びピッチの外で注目を集めてしまった神戸は、29日の第16節で北海道コンサドーレ札幌をホームに迎える。直近の3試合で11失点を献上している札幌からゴールを、何よりも勝利を奪えなければ、神戸はますます泥沼にはまり込んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)