ドゥカティ ムルティストラーダV4、2025モデル発表【エンジン/電子制御デバイスが進化】
ドゥカティは、『ドゥカティ・ワールド・プレミア2025』の第2弾として、『Multistrada V4(ムルティストラーダ V4)』とその上位モデル『Multistrada V4S』、さらに派生モデルとなる『Multistrada V4 Pikes Peak(ムルティストラーダV4パイクスピーク)』の2025年モデルを発表した。 【画像】2025 ドゥカティ ムルティストラーダV4
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー
ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。2025年式ムルティストラーダV4は、広範囲にわたるアップデートによってあらゆる道を走破する性能と安全性、快適性を熟成させた。おもなアップデート内容は── ・V4エンジン改良による燃費向上 ・フェアリング改良による空力性能向上 ・前方衝突警告機能追加による安全性向上 ・ヘッドライト機能の進化による安全性向上 ・各種電子制御デバイスの性能向上 ・自動車高低下機能による安全性向上(Sのみ) V4グランツーリスモエンジンは、逆回転クランクシャフト/ボア×ストローク/最高出力/最大トルク/それぞれの発生回転数などの仕様に変更はないが、軽量化によって従来型のムルティストラーダV2(2気筒)よりも1.2kg軽くなった。 アイドリング時にリアバンク(車体後方のシリンダー)を停止する機能は強化され、エクステンデッドディアクティベーション(強化版シリンダー休止機能)へ進化した。アイドリング時だけでなく、低速走行中もリアバンクを休止させるもので、従来型と比較してCO2排出量と燃料消費量を最大6%低減。環境に与える影響を減らすとともに、航続距離も伸ばしている。これによって新しい排ガス規制ユーロ5+に対応している。 エンジンのメンテナンスサイクルは延長され、オイル交換は1万5000km毎、バルブクリアランス点検は6万km毎になった。 フェアリングデザインは従来型を踏襲しつつ、よりシャープとなり、916を源流とするドゥカティスーパーバイクに通じるクロスオーバースタイルとなった。さらにフェアリングの下に設けたデフレクターによってライダーの膝あたりへの走行風を増量すると同時に、エンジンの放熱を効率的に排出する。これは横方向に2個のラテラルコンベアによって相乗効果を生み、空力性能を高めることでとくに高速巡航時のライダーとパッセンジャーの疲労を軽減する。 電子制御デバイスは、『ドゥカティビークルオブザーバー(DVO)』を新たに導入することで、各種デバイスの精密さをさらに向上。DVOは慣性プラットフォームのデータを統合する機能で、車体各部にある70個のセンサーの入力をシミュレートし、車体に作用する路面からの入力と、さまざまな走行条件で車体が耐えうる荷重を予測する。 これによってコーナリングABS、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)の作動をより正確に、緻密にすることに成功した。 ブレーキ関連では、フロントとリアのブレーキ配分を制御して車体を安定させる『エレクトニックコンバインドブレーキシステム(eCBS)』を新採用した。フロントブレーキをかけるとリアブレーキも作動し、制動時の車体安定性と安全性を高める機能だ。逆にリアブレーキをかけたときもフロントブレーキが作動し、コーナリング時の安定性を向上。緊張を感じることなくコーナリングに集中できるうえ、よりタイトな走行ラインをトレースできる。また、ブレーキシステムではリアディスクが従来型の265mmから280mmへ大径化された。 レーダー機能も強化され、従来型が搭載していたアダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポット検知機能に加えて『前方衝突警告機能』がプラスされた。これは前走車との車間距離が短くなって衝突の危険が高まった際に、メーターにインジケーターを表示することでライダーへ警告を発する機能だ。 ライディングモードは、従来のスポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロに加えて、『ウェット』が追加された。文字どおり濡れた路面で効果的なモードで、スロットルレスポンスは穏やかになり、最高出力は115psに制限され、ABSやトラクションコントロールその他のデバイスも連動する。また、従来から引き継ぐそれぞれのモードも、より安全かつ快適な走行フィールへと改良されている。 夜間走行のコーナリング時にヘッドライトの照射範囲を最適化するドゥカティコーナリングライトに加え、フロントホイールの影の領域を減らす『ヘッドライトクラスター』を新たに装備した。これにより、夜間走行時の視認性も向上させ、さらに『カミングホーム』は、イグニッションをオフにした後もロービームヘッドライトを数秒間点灯する。 V4Sに搭載される電子制御サスペンション『ドゥカティスカイフック(DSS)EVO』も進化した。フロントフォークに備えたセンサーが路面の凹凸などを検知したデータを基に車体の挙動を予測し、リヤサスペンションの減衰力を自動調整する。これにより荒れた路面やバンプなどをスムーズに通過できるようになった。また、車体姿勢を一定にするセルフレベリング機能を持つほか、どのライディングモードを選んでいても走行中に任意のサスペンション設定に変更することも可能となっている。 DSS EVOには『自動車高低下』機能も新たに採用している。走行中に車速が10km/h以下になると最大で30mm車高を下げるものだ。下がった車高は50km/hを超えると解除され、通常の車高に戻る。これにより停車時、低速時の足つき性が向上し、転倒の危険を軽減する。