大黒摩季さんの“ロック”なクルマへの思いとは? 「わたしも野菜を買うみたいに、“これちょうだい”って、好きなクルマを買うのが夢なの(笑)」
ロックとシャンパンとコルベット
この日、撮影のために準備したシボレー・コルベットは、大黒さんのリクエストによるもの。1954年の初代登場以来8代目となる最新の“C8型”で、エンジンの搭載位置が従来のフロントからミッドシップレイアウトになったのが特徴だ。よりスーパーカー然となった先鋭的なフォルムに、大黒さんのテンションは爆上がりの様子。 「やっぱりカッコいい。昔のロックミュージシャンはシャンパンとコルベット! って、決まっていたんです。特に昭和世代はね(笑)。人前に出るときはピカピカで、プライベートとは切り離されていて、それがセレブリティだなあって、憧れていました。殿(吉川晃司)が昔、黒いコルベットに乗っていて、『Black Corvette』っていう歌もあるんです。悔しいから、わたしはこの赤いコルベットに乗って、『ブラッディ コルベット』っていうシャレた曲でも書いてやろうかしら(笑)」 大黒さんは運転席に乗り込み、6.2リッターV8エンジンのサウンドを確かめる。 「迫力のある低音とキュッと締まった気持ちいい中音域が混じったいい音! 環境のために電気自動車、というのはわかるけど、わたしはやっぱり“音”がないと物足りない。クルマのデザインも同じで、 “便利”とか“快適”を追求していくと、だんだん同じようなカタチになっていくんですよね。わたしはそつなくまとまっているより、ゴツゴツしてたり無骨であったり、クセや個性があるもののほうが好き。今日撮影した旧いSLもコルベットも、そういう意味でキュンとしました。なんでもそつなくできる子のほうが、一緒に暮らすのにはいいけど、どうしても真っ直ぐな不器用な子に惹かれてしまう……なんて、恋人選びと一緒かな(笑)」 手触りや口当たりのよさだけではなく、ときに癖を感じさせるような強い個性があったほうがいい。その思いは大黒さんがつくり、歌う音楽にも重なる。 「音楽もいろんなアーティストがこだわって、それぞれの世界を表現しているから、多彩な曲やサウンド、ジャンルが生まれると思うんです。近ごろは世界も日本もコンプライアンスなど細かいことを言いすぎて、世の中全体の色あいが少なくなったなあという気がする。“はみ出すことを良しとしない”予定調和的な世界に違和感を感じていて、そこを突破したいなあっていつも思っています」