「ちゃんとしていなくても、いいじゃない」…朝ドラ「ブギウギ」脚本家・足立紳さんが伝えたかったこと 鹿児島を訪れた本人に聞いてみた
-笠置さんと女たちとの交流も実際にあったそうですね。 「ドラマの中では最初、スズ子は反発を受けた設定ですが、実際は最初からものすごく熱く支持された。相当人気があったんじゃないかな」 「でも反発の部分を加えたのは、同時代を生きていたみんながみんな、どんな人でもあの歌に力づけられたわけじゃないよ、みたいにしておきたかったから」 -笠置さんの魅力って何だと思いますか。 「ドラマで育てのお母さんが、死ぬときに『実の親に(スズ子を)会わせないでくれ』『実のお母さんが、私が知らない娘をこれから見ていくのは絶対に嫌だ』と言うでしょう。笠置さんがそのことを自伝に書いていたんです。同時に、自分は、育ての母とそっくりで、独占欲が強くて-とユーモラスに表現している。人間の業というか、普通は隠しておきたい部分を書いてそこにユーモアをまぶしてる。いいですよね。作品自体もこういうものを書きたいなと思っていました」
「ブギウギ」でスズ子のよきライバルとして登場したのが茨田りつ子。「ブルースの女王」と呼ばれた歌手、淡谷のり子さんだ。 -茨田りつ子の存在感は大きかったですね。 「りつ子のモデルになった淡谷さんは、笠置さんの歌い方とかをあまり認めてらっしゃらない発言が残っています。ご本人は音楽学校を出て基礎を相当みっちり勉強していた。いっぽう笠置さんは我流でやりたいようにやってる。でも淡谷さんは根底の部分で笠置さんの力を認めていたんじゃないか。好きだったんだろうな、と思います」 -戦時中、りつ子が海軍基地を訪れ、特攻隊員たちを前に「別れのブルース」を歌うシーンがあります。反響が大きかったそうですね。 「淡谷さんは戦時中、歌うときの衣装を注意されても絶対変えなかった。『これが私の戦闘服だから』と。その衣装で特攻隊員の前で歌った後、崩れ落ちるくらい精も根も尽き果てる。淡谷さんなりの戦い方をしているとの思いでつくったシーンです」