【ヤクルト】名前の由来はWBC…18歳ドラ4鈴木叶 史上初高卒新人捕手デビュー戦V打の快挙
<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク3-9ヤクルト>◇12日◇みずほペイペイドーム 今日が夢叶(かな)った日となった-。ヤクルトのドラフト4位ルーキー、鈴木叶(きょう、18)が「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク戦で「8番捕手」のスタメンマスクでプロ初出場。同点の4回2死満塁で左前適時打で2点を勝ち越した。18歳とは思えない落ち着いたリードも見せ、史上初めての高卒新人捕手のデビュー戦V打をマーク。06年の第1回WBCで日本が初優勝した日に生まれ「自分の夢も叶えてほしい」と名付けられた世界一の子が、華々しく船出を飾った。 ◇ ◇ ◇ 18歳の顔にやっと笑みがこぼれた。1-1と同点に追いついた4回2死満塁。鈴木が、ソフトバンク先発の大津の5球目のスライダーをしぶとく左前へ運び2点適時打。高卒新人捕手では初となるデビュー戦決勝打に「なんとか食らいついて強い気持ちで打てた」と右手を高々と突き上げた。7回にも左前に飛ばしマルチ安打。守備ではファームでもバッテリーを組んだ先発山野と次々とアウトを重ねて手玉に取った。 正捕手の中村が上半身のコンディション不良で出場選手登録を外れ、前日11日に1軍昇格した。スタメン発表はこの日球場に着いてからだった。球団で高卒新人捕手の先発出場は70年ぶり2人目の快挙だったが、口癖の「全力プレーでできることをやろう」を貫いた。試合では新人らしかぬプレーを見せたが、初めてお立ち台では緊張しきり。「すごくうろしい…うれしいです」とかむ場面もあったが、最後は「自信になります」と力強い言葉が出た。 常葉大菊川高時代には高校日本代表候補に名を連ね、3年時に左親指のケガもあってドラフト上位指名を逃した。橿渕スカウトデスクが「けががなければ、高校日本代表の正捕手レベルだった。4位では取れなかった」と評する実力者で、1月の新人合同自主トレでは背筋力、50メートル走、インタバール走などでも上位を独占し、フリー打撃で150メートル弾をかっ飛ばし、首脳陣を驚愕(きょうがく)させた逸材だ。 第1回WBCで日本が初優勝を収めた06年3月21日(米時間同20日)に生まれ、名前の由来はWBCにちなむ。父・剛さんは「WBCで日本の夢が叶った日、自分の夢も叶えてほしい」と命を吹き込み、18年後にプロの舞台でまた1つの夢を「叶」えた。次なる夢は「捕手として。チームが優勝に近づけるように頑張っていきたい」。燕軍団に大きな期待を抱かせる若人がまた1人出てきた。【平山連】 ▽ヤクルト高津監督(鈴木について)「期待と夢と希望と、詰まった選手。バッティングも含めて、どっしりとした感じがあるのは非常にプレーヤーにとっては大事なところ。ちょっとスパイスであったり、チームをいい方向に向けてくれるんじゃないか」 ◆鈴木叶(すずき・きょう)2006年(平18)3月21日、静岡県掛川市生まれ。西山口野球少年団で野球を始め、掛川東中では浜松南リトルシニアに所属。常葉大菊川で2年から正捕手を務め、3年春センバツ出場。23年ドラフト4位でヤクルト入団。今季のファームでは3月16日開幕戦でデビューし、いきなりサヨナラ安打。今季推定年俸550万円。181センチ、81キロ。右投げ右打ち。 ▼初出場の高卒ルーキー鈴木が4回に決勝点となる適時打。2リーグ制後、高卒新人が初出場で勝利打点(V打)は、17年10月3日中日戦の細川(DeNA)に次ぎ2人目。細川は初打席が3ランでこれが決勝点だった。なお、高卒に限らずヤクルトの新人が初出場でV打は、95年6月21日広島戦の稲葉以来29年ぶり。 ▼鈴木は18歳2カ月。18歳でV打を記録したのは22年8月19日楽天戦の松川(ロッテ=18歳9カ月)以来で、ヤクルトでは06年10月10日広島戦の川端(18歳11カ月)以来。他には51年9月22日名古屋戦で投手の金田が18歳1カ月でマークしており、鈴木は金田に次ぐ球団2位の年少記録。 ▼鈴木は捕手で先発。高卒新人のスタメンマスクは22年に70試合起用の松川以来だが、球団では54年阿井以来70年ぶり2人目。阿井は10月14日阪神戦を始め、7試合に捕手で先発した。