柚香光がマチュー・ガニオと新作のデュエットダンスを披露
元宝塚歌劇団花組トップスターで、2024年5月に退団したばかりの柚香光が、『マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート』に出演する。マチューは20年間もの長きにわたりパリ・オペラ座バレエのエトワールを務め、2025年春にはアデュー公演が控えるというタイミング。正統派男役として、また宝塚屈指のダンサーとして数々の名舞台を紡いできた柚香は、マチューと新作のデュエットダンスを披露する予定だ。 他に、アマンディーヌ・アルビッソン(パリ・オペラ座バレエ エトワール)、ジャコポ・ティッシ(オランダ国立バレエ団 プリンシパル)、パブロ・レガサ(パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール)、シルヴィア・サン=マルタン(パリ・オペラ座バレエ プルミエール・ダンスーズ)、さらにスペシャル・ゲストとして上野水香(東京バレエ団 ゲスト・プリンシパル)が出演する本作。その意気込みとマチューへの想いについて、柚香に聞いた。 マチューとの共演について、「バレエ少女だったので、本当に夢のようです」と声を弾ませる柚香。マチューからは“一緒にやりましょう!”とのメッセージも届いたそうで、「人生でも何回あるかというくらいの大きな出来事」と嬉しさをにじませる。きっかけは、世界的な振付家でドイツのハンブルク・バレエ団芸術監督であるジョン・ノイマイヤーが、宝塚花組でトップを務めていた頃の柚香の舞台を観たこと。 「それでノイマイヤーさんが興味を持ってくださり、マチューさんも私のことは知っていたそうです。同じパリ・オペラ座バレエでエトワールを務めるオニール八菜ちゃん(柚香とオニールは岸辺バレエスタジオ出身)からも話を聞いてくださっていたようで」(柚香)というから、不思議な巡り合わせだ。 もちろん、宝塚ではジャズダンスなどのシアターダンスが中心。マチューとのデュエットダンスは、異なるジャンル同士の化学反応が見どころとなる。 「宝塚で踊っていたダンスは、リズムの取り方やエネルギーの使い方、筋肉の作り方などもバレエとは全然違います。その2つをどういう風に“融合”していくのか想像は容易ではないですが、ぜひ挑戦させていただきたいと思いました。宝塚では15年間、さまざまなダンスや芝居、歌などの経験を積み重ねてきたので、そういったことを活かせるのであれば、勇気を出して未知の世界に踏み出してみたいと思ったのです」と柚香は明かす。 相手役となるマチューの魅力を改めて尋ねると、「それはもう“美しさ”ですよね」と即答。 「そのうえ高い技術も備えていらっしゃって、おとぎ話に出てくる王子様をそのまま体現できる方だなと。“美しさ”といっても色々な種類がありますが、マチューさんの場合は四肢の使い方や身体への音楽の取り入れ方など、細部に至るまで神経の行き届き方が本当に素晴らしくて……。容貌だけでなく、作品への丁寧な向き合い方や舞台への真摯な姿勢など、内面から滲み出るものも含めてとても美しい方だなと感じています」と語る。 丁寧さや真摯さは、いみじくも柚香自身の印象と重なる。宝塚のトップスターは非常に多忙と聞くが、在団中の柚香はいつも穏やかに微笑みながら、ゆったりとしたエレガンスをまとっていた印象だ。“バレエの遺伝子”は確かに柚香の中に息づいていたのでは? と聞くと、「いえいえ、在団中は公演のお稽古で1日があっという間なので、バレエのレッスンに行くこともなかなか出来なくて」と答えつつ、「ただ、“バレエ”はどんなときも私のそばにあった気がします」と言う柚香。 「たとえばダンスの振付を身体に落とし込むとき、上手くいかずにその振付に対して理解を深めたいと思ったときに、やっぱりバレエを踊っていた頃に培った基礎や知識が役に立ちました。宝塚の男役は重心を下に落とすのが基本なので、常に身体を引き上げるように意識するバレエと両立させるのはなかなか難しいのですが、それでもバレエの感覚が自分の中に残っていて良かったと思うことがよくありましたね」と柚香は明かす。