障害者の雇用「代行ビジネス」は是か非か、専門家たちが出した結論は? 「働く場を提供」でも「社員という実感はない」
こちらの研究会の特徴は、農園などで働く(働いていた)障害者91人とビジネス事業者7社、利用企業23社に昨年7月~今年1月、アンケートや聞き取り調査をしたことだ。 その結果、ビジネス事業者や利用企業が考えているほどには障害者は満足しておらず、昇給の状況などでも認識に差があることが分かった。 障害者の満足度を尋ねると、利用企業は「とても満足していると思う」との回答が56.5%だったが、当事者は17.6%にとどまった。当事者の25.3%は「不満」と答えたのに対し、そう認識している利用企業はゼロだった。 ビジネス事業者の57.1%、利用企業の43.5%は「昇給することがある」と答えたが、障害者では16.5%だった。「利用企業の社員としての実感がある」と答えた人は半数強にとどまった。 ビジネス事業者や利用企業は意義をPRしているが、実態を誇張している可能性があるといえそうだ。 研究会の報告書は、もう片方と共通する点が多いが、座長の中島教授が問いかけるのは、障害者雇用全体の在り方だ。教授はこう話す。
「代行ビジネスだけを『けしからん』と言っても、話が前に進まない。障害者雇用を通じて、どういう社会を目指すのか。どんな働き方を選択すれば当事者や企業、社会にリターンがあるのか。みんなで考えたい」 ▽障害者同士は連絡先の交換禁止 ここで、農園で働いていた冒頭の須川さんと稲田さんの体験談に戻ろう。実は、2人が感じていたことは有識者研究会の指摘と重なる部分が多い。2人が特に強く訴えるのが、障害者3人に対し1人いる農園長の質のばらつきだ。 農園を運営するエスプールプラスが、地元のシニア人材などを利用企業に紹介しているのだが、障害福祉の経験は問われず、「障害者差別やパワハラのような言動をする農園長が複数いた」と2人は話す。 さらに、エス社の方針で障害者同士は連絡先の交換を禁じられ、一緒に食事や遊びに行くことも許されなかったという。 農園型のビジネス事業者として最大手のエス社は、2人の話や有識者研究会の指摘にどう答えるのか。取材すると、こう回答が返ってきた。