障害者の雇用「代行ビジネス」は是か非か、専門家たちが出した結論は? 「働く場を提供」でも「社員という実感はない」
▽メリットの2倍の問題点 ただ、このビジネスを巡ってはいくつか問題点が指摘されている。一般社団法人「日本農福連携協会」の有識者研究会(座長・駒村康平慶応大教授)が今年2月にまとめた報告書を見てみよう。 この研究会は雇用代行ビジネスのメリット・デメリットについて整理し、啓発や提言をしようと同協会が昨年2月につくった。委員は障害者の就労支援団体役員や有識者ら13人だ。 報告書は、このビジネスの利点として ・障害者が大きな企業に採用され、最低賃金以上を受け取れる ・障害者の雇用の場が確保される ・ノウハウのない企業でも容易に法定雇用率を達成できる ―など7項目を挙げた。 一方、問題点はその約2倍の15項目を列挙。 ・労働の成果物が賃金の財源ではない ・障害特性に応じた労働環境が確保されておらず、生産性も著しく低い ・仕事にやりがいを持てない ・利用企業によっては障害者雇用を自社の取り組みと捉えていない
―などと指摘した。「障害者の就労・雇用に悪影響を与える」ともしている。 報告書が最も強く求めているのは、障害者が職業的に成長できる機会や環境をつくることだ。 ビジネス事業者に対しては、農産物の販売に向けた戦略や、他の職場への配置・就職に向けた支援などを要請。利用企業には、経営方針や人材戦略の中で障害者雇用を捉え、責任を持って雇用管理を行うよう求めた。 国に対しては、代行ビジネスがより良い形になるよう指導すべきだと指摘。企業が雇用を生み出せるような条件整備や仕組みづくりを求めた。さらに、雇用率という「量」だけでなく「質」も加味した仕組みが将来的には必要だと提言した。 ▽企業側と障害者で認識にギャップ 有識者の研究会はもう一つある。日本財団の補助金を受け、慶応大学の中島隆信教授を座長に、やはり13人で1年前につくられた。数人は農福連携協会の研究会と両方に参加。今年3月に報告書を発表した。