「育休は企業のトレーニング」「ポイントは有給消化」男性側も抱え始めた取りづらさを専門家が解説
■育休から復帰しやすい環境づくりとは
一方で、育休から復帰しやすい企業もある。「月次でレポートを送ったり、同僚との面談を行ったりして、取引先や人事異動の情報を共有する。接点があるだけで復帰はしやすくなる」。また女性育休では、「復帰前に赤ちゃんを連れて社内ツアーをする」ケースもあるという。「顔と名前が一致していると、『あの子が熱出した』と休みやすい雰囲気が作れる。ケアの仕方で、復帰後の離職率も変わる」。 自身の育休取得経験を「社会と断絶したぐらい、一切連絡が来なくなる」と振り返りつつ、「時間が空いたときに、レポートに軽く目を通すだけで、話しについていける」と、情報共有のメリットを語る。 社会学者で城西大学助教の塚越健司氏は、「知り合いの子どもはうるさくない」現象と似ていると表現する。「江戸時代の長屋は、壁が薄くても許せた。人間関係を作って、『子どもはいろんな場所にいる』と知ることで、もっと雰囲気作りは進む。これから介護やうつで休職する人も増えていく。日本は人材不足で、やめてもらったら困る。企業側からの雰囲気作りが必要だ」と語った。
■育休消化へ組織が一番やらないといけないこと「有給消化の促進」
徳倉氏は、組織が育休取得を進める上では、まず「有給消化の促進」が必要だと説明する。「働く人全員に権利がある有給休暇を、全体が取れるような企業風土にならなければ、育休や介護休暇にはたどり着かない」。 その背景には「子育てが終わっている」「結婚していない」などの対立構造を招いてしまうなど、「気持ちに差が出てくる」ことがある。「まずは有休をしっかり取れるような組織を作る。その上で、介護や病気療養による長期休暇に対応できる組織を作っていくべきだ」。 男性の育休取得を阻むハードルとして、金銭面が挙げられていたが、徳倉氏によると「日本の給付額は、世界的に見ても上位」なのだという。しかし、「日本は子育てにお金がかかりすぎる」現状もある。「欧米の先進国では、個人所得ではなく、世帯の可処分所得を上げる政策を行っている。教育費や医療費を抑えて、子どもを産みたい人が増える社会にしつつ、セットで高水準の給付を行う必要がある」と提案する。 金銭面では「社会全体で負担するものと、個人で負担するものを明確にわける」必要性を語る。「組織も個人も、金銭が免除になる制度があり、合算すると7割ぐらいの給与水準に落ち着く試算もある」。加えて、「組織によっては『保育園の保育料は、入園前年の収入で決まる。このくらい休んだ方がいい』とアドバイスしている。制度を熟知することが大事だ」と語る。 とくに重要なのは、休んでいる間も「チームの一員」として認識されているか否かだという。「収入面で言えば、子育ては期間限定だ。手がかかるのは、小学生ぐらいまでで、そこまでは収入やスキルのレバレッジがある程度効く。自分のライフステージを考える期間としても、育休は大事なポイントだ」。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部