二語文が出ないときはどうする? 言語聴覚士に聞いた「子どもの言葉の引き出し方」
ことばを育む土台に目を向けて
1他者への意識を育む 先述の通り、ことばの発達の土台は、他者の存在に気づき、関心をもつこと。 「ことばのキャッチボール」と言われるように、実際のキャッチボールも人への興味を育めるあそびです。保育者と子どもが物を行き来させると、人に頼む意思が芽生え、やがて語彙の増加に。 また、子どものひとりあそびに加わり、保育者という他者の存在に気づけるよう声をかけても。 【おすすめしたい関わり方】 ・転がしキャッチボール ボールを子どもの方に転がして、保育者の方に返してもらって。そのやり取りが、人を意識することにつながります。 ・話すときには物を顔のそばに 他者への興味が薄い子は人ではなく、物のみに注目してしま います。保育者の顔が自然と視界に入るようにしましょう。 2あいさつや興味のあることを 「おはよう」「いただきます」などのあいさつは、子どもが生活の中で日常的に交わし、相手や状況によってあまり変化しないことばなので、導入に最適。また、子どもの関心も語彙を広げるのに有効です。 車が好きな子なら、車のおもちゃで色を学ぶのもよいでしょう。 「たべたい」「ちょうだい」などの要求表現も、子どもにとって習得しやすいことばです。 【おすすめしたい関わり方】 ・あいさつを一緒に あいさつは、くり返しの中で習慣になることば。日常的に何度もくり返し、語彙を増やす第一歩にするとよいでしょう。 ・好きなものや要求表現から 好きなことや要求表現のことばは習得しやすいです。やみくもに語彙を教えるのではなく、子どものメリットを意識。 3多感覚でことばを習得 ことばは、聴覚、視覚、触覚、味覚などの感覚とマッチングさせることで、記憶に強く残りやすくなります。 例えば、たんぽぽの綿毛を一緒に触って、「白くてふわふわだね」と色や感触をことばにします。また、「温かい」「冷たい」など対になることばは、両方を体感し比較することで理解が進みやすく、語彙をセットで学べるメリットも。 【おすすめしたい関わり方】 ・体感をことばにする 物を保育者と一緒に触って、感触をことばにすることで同じ感覚を共有します。 ・対になることばは比較して 「温かい・冷たい」「大きい・小さい」などの表現は、触覚や視覚で比較すると理解しやすいです。 4話しことば以外の方法も取り入れて ことばの表出に課題のある子は、伝えたいことが複雑化するなかで、うまく伝わらないジレンマから、ストレスを抱えることがあります。 話しことばではない方法でも本人が意思表示できることを優先し、ジェスチャーや絵カードを使ったコミュニケーションを取り入れましょう。人とのかかわりを楽しいと感じられることが大切です。 【おすすめしたい関わり方】 ・ジェスチャーで意思表示をする 「いいよ」は丸、「いやだよ」はバツなど、子どもの意思を体で表現する方法を取り入れてみましょう。 ・絵カードでコミュニケーションを 視覚的にわかる絵カードを示して指さしを促すと、意思表示がスムーズに。
白馬智美(公認心理師)