金融庁の有識者会議、大規模保険代理店の「自主規制機関」設置を検討 修理工場との兼務は禁止見送り
旧ビッグモーター問題などを受けて損害保険業界の構造的課題を話し合うために金融庁が設置した「有識者会議」(座長=洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)の4回目の会合が6月7日に開かれた。金融庁は6月下旬にまとめる予定の報告書案を示した。大規模な乗合保険代理店を管理監督するために法的根拠を持つ「自主規制機関」の設立の検討が柱。旧ビッグモーターのように修理工場が保険代理店を兼務することの是非も焦点の一つだったが、禁止措置は見送られた。 保険業法では原則損保が代理店を管理監督する。ただ、保険販売額が大きく複数の商品を扱う大規模な代理店が増え、損保との力関係が逆転していると指摘される。損保代理店は16万弱あり、金融庁も権限を委譲されている各地の財務局も十分な管理監督ができていなかった。 証券業界では、日本証券業協会が金融商品取引法で「自主規制機関」として位置付けられており、損保業界でもこのような組織の設立を想定している。 大規模代理店については、法令上、より厳しい体制整備を求められるようにする提案もあった。 修理工場の代理店兼業問題については「兼業を禁止することも考えられなくはないが、顧客の利便性や(自動車損害賠償責任保険に加入しない人が増えて)自動車事故被害者救済機能の低下といった弊害があり、この弊害を適切に管理することが合理的である」とした。対策として「利益相反」に関する管理方針をウェブサイトで公表することなどを挙げている。 また、損保各社は「代理店手数料ポイント制度」を導入しており、これまでは保険販売額が多いと原則手数料が増えるシステムだった。これについて業務の質を重視するように求めている。その考え方や、損保ごとの手数料総額を開示することで、保険契約者が商品を選ぶ基準にしてもらうことも提案している。 これらの提案は「有識者会議」の提案という位置づけだ。会議メンバーであるデロイト・トーマツ・コンサルティングの滝沢明子執行役員は「これを実効性の高いもの、形にすることが大事」とし、今後の金融庁の作業に期待を示した。 大規模代理店に対しての監督強化につながる提案が多かったため、どのくらいの規模から「大規模代理店」とするかの定義も今後の焦点となりそうだ。 今後、金融審議会(事実上の金融担当相の諮問機関)で議論され、法改正などの作業に入るとみられる。 (編集委員・小山田 研慈)