11年ぶり来日のデンゼル・ワシントン、インタビューでお茶目発動も! 『グラディエーターII』は監督からの“演出なし”で演技
■芝居の基本は演じる役を深く掘って探索すること
観察しながら少しずつ核心に近づいていく…本作で見せたデンゼル独自のアプローチは、ほかの作品の役でも適応するものなのか? これに対してデンゼルは、「観察」よりも「探索」のほうがふさわしいと語る。「脚本を読むときに、まずやることは、その物語の奥にあるものは何なのか、シャベルで掘って、掘って、深いところまで掘って、突き詰めるんだ。それが終わったら、あとは全身でその役に飛び込んでいくのみ」と力説。 そしてもう一つ大切なことは、「周りがどういう撮影環境か、演じる人物にどんな歴史があるか」ということも影響してくることがあるという。「特に今回のセットはものすごく、見渡す限りそこは、古代ローマそのもの。きちんと準備をしておけば、これほど演じやすい環境はないと思った。それから、サンダルを履くことも重要なこと。スニーカーでセットを歩くこともあったけれど、何かピンと来ないんだ。やはり、砂ぼこりが足にかぶるあの感覚を味わわないと、今一歩、入り込めない感じがするんだ」と独自のアプローチ法を明かしてくれた。 照れ屋でちょっぴりアマノジャク。真摯(しんし)な質問には、最初はおどけてみせるが、最終的にはピシッと引き締まる言葉で締めてくれる。来日スターのインタビューは、毎回ワクワクする反面、胃が痛くなるほど緊張するが、今回は慌ただしかったけれど心の底から楽しめた。それも全てはデンゼルの人柄のおかげ。『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』ではまるで真逆、血も涙もない非情な奴隷商人を演じているが、この落差にこそ名優たるゆえんがあるのだ。(取材・文・写真:坂田正樹)