10年ぶりの"山の神"誕生なるか 3大駅伝で優勝を目指す創価大・吉田響の並々ならぬ思い
榎木監督は、吉田について「トラックシーズンでしっかりと結果を出した」と評価している。 「本人は、5000m13分30秒、10000m27分台を目標にしていたので、もう少し足りないというのがあるんでしょうけど、私としては十分ですし、他校のトップとしっかりと戦えるかなと思っています」 チームとしての手応えも榎木監督は感じているという。 「昨年はスピード強化で5000mを中心にトラックシーズンを作ってきたんですけど、今年はそのベースを上げ、5000mと10000mの両方をしっかりと戦える状態を作ろうということで、春からチャレンジしてきました。多くの選手が試合慣れしてきて、28分30秒切りに近づいてきているので、当初のイメージよりよく走ってくれていると思います。 ただ、3大駅伝で優勝を狙うには青学大や國學院大あたりがライバルになってくると思いますし、強豪校はまだ自分たちの上にいます。夏合宿をしっかりこなして、そこで成長する選手に期待していきたいですね」 吉田も3大駅伝に対して並々ならぬ決意でいる。 昨年度の出雲駅伝で創価大は2位。吉田は5区で区間賞を獲ったが、駒澤大に及ばなかった。全日本大学駅伝、吉田は5区区間新の快走を見せたが、チームは6位に終わった。箱根駅伝、吉田は「山の神」になるべく5区を駆けたが区間9位というまさかの結果に終わり、チームは総合8位に終わった。 「トラックシーズンも終わり、これからは出雲、全日本、箱根の3本だけで行くつもりですし、すべて区間新記録と箱根駅伝では山の神になるのが目標です」 4年生になり、今年度が3大駅伝で優勝するためには最後の挑戦になり、「山の神」の称号を得るトライもラストになる。秘策はあるのだろうか。 「大事なのは夏合宿ですね。そこで距離を踏むこと。その後、出雲と全日本でスピードが入ってきての対応もしないといけないですけど、夏の間に距離走に加え、心肺に負荷をかけて長い時間走る練習をできるのかがカギになってくると思います。 普段の練習から手を抜くことなく、緊張感を持ってやっていきたいですね。とにかく、ずっと目標にしていた山の神は、絶対に成し遂げます」 吉田は、力強い言葉でそう締めた。 ただ、山の神は、タイムが速いだけではその称号は得られない。タイムだけで言えば、昨年度の山本唯翔(城西大・現SUBARU)は2年連続で5区区間新を出し、「山の神」と呼ばれてもおかしくはない偉業を達成した。妖精にはなったが、山の神になれなったのは、残念ながらチームの優勝に届かなかったからだ。 今年度の箱根駅伝、創価大が小田原中継所でトップ、あるいは上位に喰らいつき、吉田が区間新の走りで往路優勝に導くことができれば、神野大地以来、10年ぶりに「4代目・山の神」が誕生するかもしれない。
佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun