同じ能力の部下が2人いたら、どこを伸ばすか…ネットフリックスの人事担当者が定義する「優秀な上司」の特徴
同じ業界にいても、生き残る企業と没落していく企業は、何が違うのか。医師でインフルエンサーのアリ・アブダールさんは「社員の能力そのものよりも重要なことがある。ネットフリックスの成功がこれを証明している」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、アリ・アブダール『Feel Good 快適な努力で最高の成果を上げる方法』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。 ■時価総額3000億ドルの企業はこうして生まれた 2000年9月、リード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフは創業間もないネットフリックス(Netflix)社をブロックバスター・ビデオ社のCEOに売却しようとしていた。だが、その試みは大失敗に終わった。 2人はそれまで、レンタルビデオ界に革命をもたらす画期的なビジネスモデルに賭けていた。 それは、「顧客がウェブサイトでレンタルしたいDVDを注文し、郵送で受け取りや返却ができる」というものだった。だが、2人が全身全霊をかけて取り組んでいたにもかかわらず、同社の経営状況は悲惨だった。100人以上の従業員を抱えていたが、有料顧客はわずか3000人。赤字は年末までに5700万ドルに達する見込みだった。 ネットフリックスを売却しようと思ったヘイスティングスとランドルフは、何カ月もかけて電話やメールをやり取りし、ようやくダラスの本社でブロックバスターのボス、ジョン・アンティオコとのミーティングにこぎ着けた。これは大きなチャンスだった。 ブロックバスターは全世界に9000以上の店舗を持つ時価総額60億ドルの上場企業で、アメリカのビデオ市場を支配していた。 ■ブロックバスターのCEOに一笑に付された しかし、このせっかくのチャンスも活かすことはできなかった。 当初、アンティオコとブロックバスターの顧問弁護士エド・ステッドは友好的で、礼儀正しかった。ヘイスティングスとランドルフが、ブロックバスターがネットフリックスを買収するメリット、つまりインターネット時代の新しいタイプのビデオレンタルの方法について熱っぽく説明しているあいだも、注意深く耳を傾けてくれた。しかしそのとき、アンティオコが重要な質問をした。 「いくらで売りたいんだ?」 「5000万ドルです」 しばしの沈黙。そして、アンティオコは大笑いし始めた。