元寇の沈没船調査で培った「松浦方式」、未開の水中遺跡保護にノウハウ…海洋開発でニーズ高まる
沈没船に代表される水中遺跡は、海底に埋もれて無酸素になると有機物が分解されず良好な保存状態で見つかる場合があり、交易などの仕組みを伝えるタイムカプセルにも例えられる。
海外では文化財保護の観点から、国主導で水中遺跡の調査と保存に取り組む例が多い。しかし、国内では費用や技術の問題から調査体制の整備が進んでいない。文化庁によると、把握されている国内の約46万8000か所の遺跡のうち、水中遺跡はわずか387か所。滋賀と長崎、沖縄県に集中しており、全体の8割の自治体は水中遺跡の有無も把握していないのが実情だ。
今後は、洋上風力発電などの海洋開発が進むと予想されるため、調査による遺跡の把握と保護が課題となっている。
同遺跡の調査指導に当たっている国学院大の池田栄史教授(考古学)は「水中遺跡の調査が進まない現状を打破するのは人材育成。研修を重ね、他の自治体にも潜水や発掘の技術が普及することが重要だ」と語った。
◆鷹島海底遺跡=伊万里湾に浮かぶ鷹島沖にあり、モンゴル帝国(元)による2度目の来襲・弘安の役(1281年)で約4400隻の元寇船が沈んだとされる。これまでに船体や木製いかりなどが発見され、2012年に遺跡の一部が水中遺跡では初めて国史跡に指定された。