鄭大世(チョン・テセ)に聞くW杯予選2連戦の見どころ。森保ジャパンは北朝鮮をナメてはいけない!!
■完全なるアウェー、金日成スタジアム 今回はその対戦以来、13年ぶりに平壌の金日成スタジアムに乗り込む。当時ピッチに立っていた鄭大世氏は「完全なるアウェー。あの独特の雰囲気の中、いつもどおり戦うのは困難」とする。 「スタジアム内はほぼすべてが北朝鮮のサポーター。スタンドでマスゲームのように人文字がつくられ、試合が始まれば怒号のような声援が響く。僕も現役時代にいろいろな場所でプレーしましたが、あの雰囲気はほかにはないです。 今回も約5万人収容のスタジアムが満員になるでしょう。サポーターも気持ちを高めて臨んでくる。北朝鮮の選手にとっては心強いですし、逆に日本の選手にとっては今までに経験したことのない雰囲気。 13年前に北朝鮮が勝ったとき、選手もサポーターもまるでW杯出場を決めたかのように喜んでいましたけど、それだけ日本戦にかける思いは強い」 22年カタールW杯のアジア2次予選では韓国と同グループに入った北朝鮮。個々の能力で上回る韓国に対し、ホーム平壌では0-0のドローに持ち込んでいる。 韓国のエース、ソン・フンミンは当時、「実力うんぬんの前に、北朝鮮で試合をすること自体が大きな負担。平壌ではインターネットも使えずにストレスがあった」と語っていた。その点については鄭大世氏もこう続ける。 「スマホは持ち込めないでしょう。また、練習と食事の時間以外はおそらくホテルの部屋に缶詰め状態。しかも、日本代表はいつも高級ホテルに泊まっていますけど、北朝鮮で一番いいホテルといっても、そういう高級ホテルと比べたら古びているし、ベッドも硬い(笑)。ホテルの中には軍服を着た警備の人間もいたりする。そうした状況がプラスになるわけはない」 北朝鮮はコロナ禍の20年以降に遠ざかっていた国際舞台に昨年ようやく復帰。この2次予選ではここまでシリアに0-1で敗れている一方、ミャンマーには敵地で6-1と大勝している。 「詳しいチーム状況はわかりませんが、(ミャンマー戦でハットトリックを決めた)FWチョン・イルガンは僕も一緒にプレーしていました。スイスでのプレー経験がある、いい選手です。 それからFWパク・クァンリョンも(11年に)スイスのバーゼルで欧州チャンピオンズリーグの舞台を経験していて、高さとスピードがある。かつてセリエAのユベントスに所属していたMFハン・グァンソンも、一時は消息不明なんて言われていましたが、メンバーに入っているようです。前線の3人は力がありますよ」 一方で日本代表については、冒頭で述べたように「過去最強」だとしながらも気になることがあるという。 「メンバーを見れば、リバプールやアーセナルなどスゴいクラブの選手ばかり。それなのに僕なんかがどうこう言うのはおこがましいですが、アジア杯での戦いぶりを見て、時代が変わっても、メンバーが変わっても、ロングボールへの対応という昔からの日本の弱点は変わっていないなと。不思議ですよね。 北朝鮮もアジア杯の試合映像を見ているでしょうし、当然狙ってくるはず。日本はサッカーをどこまでもスポーツととらえているというか、『スポーツマンシップにのっとり』に乗っ取られているようにも見えます。 勝負事は相手との駆け引きの上で成り立つので、どれだけ激しく目の前の相手を潰すかという意味で、日本代表の優しさがスポーツの枠からはみ出せない弱点になっているような気がします......あくまで私見ですが」