8か月で3度も離脱…不発に古巣監督から「ありがとう」 苦労人が掴んだ“1人連覇”のチャンス【コラム】
昨季は福岡の一員としてトロフィーを掲げた
昨シーズンのルヴァンカップ決勝は、福岡が2-1で浦和レッズを振り切り、クラブ史上で初めてとなる国内三大タイトルの1つを獲得して幕を閉じた。FWで先発し、後半終了間際まで国立競技場のピッチに立った山岸の記憶には、優勝した瞬間や表彰式を通して見た光景がいまも色濃く焼き付いている。 「本当に最高の景色だったし、あのときに『この景色をまた見たい、喜びをまた味わいたい』と強く思いました。今シーズンから名古屋の一員になって、怪我が続いて本当に難しい1年になっていますけど、そこで気持ち的に落ちるのではなくて、ルヴァンカップの決勝で僕がゴールを決めて、優勝のヒーローになると常にイメージしてきました。チームは今シーズンからエンブレムも変わって新しくなっているので、新しいユニフォームにタイトルの星をもう1つ付けて、グランパスファミリーのみなさんと一緒に喜び合いたいと思っています」 福岡からは昨シーズンのオフに山岸ともう1人、DF三國ケネディエブスが名古屋へ完全移籍している。ただ、名古屋の守備の要へと急成長を遂げた三國は、昨シーズンはリーグ戦で出場18試合、プレー時間496分にとどまり、浦和とのルヴァンカップ決勝ではベンチ入りメンバーにも名を連ねていなかった。 つまり、前売り段階でチケットが完売した2日の国立競技場のピッチで、クラブ史上初のタイトル獲得を目指すアルビレックス新潟を相手に、さまざまな形で思い描くイメージを現実のものにした時――山岸は昨シーズン、そして今シーズンとルヴァンカップ決勝の舞台に立ち、なおかつ連覇を経験する唯一の選手となる。 [著者プロフィール] 藤江直人(ふじえ・なおと)/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
(藤江直人 / Fujie Naoto)