中国の「台湾侵攻」描くドラマ「零日攻撃」、台湾有事に警鐘…中国の浸透工作シナリオに「予告編を見て緊張した」
【台北=園田将嗣】台湾で中国による侵攻と浸透工作を描く初のドラマ「零日攻撃(ゼロ・デイ)」(全10話)の撮影が進み、話題を呼んでいる。中国による軍事的威圧が常態化する中、重苦しいテーマに正面から挑む作品で、制作関係者は台湾有事に警鐘を鳴らしたいとしている。 【一覧】中国が「海外警察」の拠点を置く国々
公開中の予告編動画によれば、中国が消息不明になった自軍機を捜索救助する名目で、台湾周辺の海域を封鎖する設定だ。ドラマでは、中国ハッカーによるサイバー攻撃や台湾に潜伏する内通者の反乱が起こるほか、半導体関連の株価は暴落し、在留外国人は脱出を図る。
中国が日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作を図る中で描く有事のシナリオに、制作で助言した台湾の国防安全研究院の蘇紫雲(スウズーユン)・国防戦略資源研究所長は「予告編を見て私も緊張した」と話す。
制作を手がけるプロデューサー兼脚本総括の鄭心媚さんは、中国の侵攻を「デリケートな話題であり、私たちはいつもその話を避けてきた」と語る。制作の意図について「中台間で戦争が起きたり、台湾が中国の一部になったりすれば、話す機会がなくなるため、今こそ話すべきだ」と訴える。
危機に際して台湾の人びとがどう選択するのか、様々な意見を取り入れようと30~60歳代の監督9人を起用した。脚本作りには軍事などの専門家が協力した。
制作費2億3000万台湾ドル(約10億9600万円)のうち3割を台湾当局が補助し、軍も制作に協力する。野党は、中国と距離を置く民進党政権のプロパガンダだと批判するが、予告編の動画の再生回数は196万回を超え、反応は上々だ。
台湾や香港の俳優のほか、日本から高橋一生さんと水川あさみさんも出演する。鄭さんが参加を打診した監督や俳優の中には、中国市場からの締め出しなどを懸念して辞退した人もいるという。作品は早ければ来年3月に完成する。