「はやぶさ2」が太陽系や生命の起源を解明するってどういうこと?
「はやぶさ2」の打ち上げは華々しい大きなイベントですが、このミッションには科学的な目的が与えられていることも忘れてはなりません。「はやぶさ2」が小惑星「1999 JU3」から物質サンプルを地球に持ち帰って来て、太陽系や生命の起源を解明するという重要なミッションです。しかし、なかなかピンと来ませんね。これは一体、どういうことなのでしょうか?
■太陽系の起源を解明する
初代はやぶさが目指した「イトカワ」はS型と呼ばれる石(Stone)でできた小惑星でしたが、はやぶさ2が目指す「1999 JU3」はC型と呼ばれる炭素(Carbon)でできた小惑星で、水分や有機物が含まれていると言われています。 宇宙の誕生は今から138億年前。私たちの地球がある太陽系は、いまから46億年前にできました。「はやぶさ2」は、46億年前の宇宙にどんな物質があったかを探ります。 地球も同じ物質でできているのですが、当初、宇宙にあった物質は、熱で溶けてしまっています。「初代はやぶさ」が到達したイトカワは、昔はもっと大きな小惑星が分裂して再び合体した小惑星だと考えられており、やはり熱で当時の新鮮な状態が残っているとは考えられていません。しかし、「はやぶさ2」が目指すC型の小惑星には、太陽系ができたときの最初の状態が残っていると言われています。 「はやぶさ2」は「初代はやぶさ」が実施した小惑星表面のサンプル採取だけでなく、インパクターと呼ばれる衝突装置を表面にぶつけてクレーターを生成。表層下にある物質の採取にも挑みます。小惑星の表面にある物質は、太陽から吹く“風”で風化したり日焼けすることが分かっているため、より新鮮なサンプルを採取するのです。 こうした今回のミッションにより、過去の太陽系に「どのような物質が、どのような状態で存在していたか」が分かり、惑星がどのように形成されたかその過程を解明しようとしています。
■地球生物のアミノ酸は左利き
太陽系の起源が分かると、生命の起源が分かるかもしれません。それが、有機物を含むC型の小惑星を目指す大きな理由です。 有機物のなかには、アミノ酸も含まれています。アミノ酸は、私たちの体を作るタンパク質です。アミノ酸には、「右利き」と「左利き」の二つの形がありますが、地球に住む生命はほとんどすべてが「左利き」だということが知られています。 人工的にアミノ酸を合成すると、「左利き」と「右利き」が同じだけできるのに、どうして生物は「左利き」のアミノ酸でできているのか? この理由が実はよく分かっておらず、「生命起源研究の最も大きな謎」と言われています。 「はやぶさ2」が持ち帰る物質に含まれているアミノ酸が「左利き」だったなら、「隕石や小惑星が地球にアミノ酸を運んできて、それが生命の源になった」という仮説の強い補強材料になります。 地球に落ちた隕石には「左利き」のアミノ酸が多く含まれているということが報告されているのですが、地球の空気に触れてしまっているので、「はやぶさ2」によって地球の環境に“汚染”されていない純粋な物質を手に入れようというわけなのです。 「はやぶさ2」が地球に帰還するのは2020年。ミッションが成功すれば、宇宙と人類の大きな謎がまた一歩、解明に近づくに違いありません。 【THE PAGE特集】 小惑星探査機「はやぶさ2」打ち上げ生中継