【バイク・インプレ】ドゥカティ「ハイパーモタード698モノ」|高回転型シングルエンジンを搭載したモタードマシン
本格モタードではあるが実は素直で扱いやすい
ハイパーモタード698モノはドゥカティ初の市販単気筒ロードモデル。エンジンは1299パニガーレの片側シリンダーをベースとした単気筒で、チタンバルブや手の込んだ形状のピストンなど、本格的なパーツが盛り込まれている。最高出力は単気筒としては驚異的な77.5PSを9750回転で実現。これはツインなみの力量に相当する。 【写真はこちら】「ハイパーモタード698モノ」の全体・各部・走行シーン 特徴的なのが純粋なオンロードモデルで、モタード用の専用設計だということ。オフ系モデルと基本構成を共有するモタードにはないシャシーの頑丈さが個性を生んでいる。 今回試乗したのは低中速のクイックなコーナーが連続するコースで、そこでの感触を元にした予想になるが、たぶん、160km/hでフルバンク、切り返しを行うような機動にも耐える。しなやかだが節度のある足まわり、それにカッチリとした応答をするフレームなど、上等なオンロードスポーツモデルの内容だった。 サスがしなやかに動くので、その分大きめの揺動があり、しっとりとした感触だが、車体の軽さや、それをさらに軽く感じさせるパワフルなエンジンのおかげで、身のこなしが素直で軽快。スーパースポーツ系のカチッとした、クイックに応えるキレの良さはないが、極めて従順に応える。 パワフルな高回転型ビッグシングルなので、低中回転域でのトルクには期待できない、と思う人もいるだろう。その通りではあるが、ライドバイワイヤのスロットル制御で、簡単にくじけない粘りが扱いやすさを生んでいる。回せばパワフルだが、身構えることなく十分に使い切れる力なのだ。 意識してドリフトを仕掛けるなら、リアブレーキできっかけを作っても6000回転以上はキープした方がいいそうだ。コレは筆者と違って、自由自在に滑らせて走れるライダーに聞いたハナシだ。ただ、そんなワンパクをせずに普通に使うなら、軽くて身軽で乗り心地もいいアッパーミドルバイクである。 だが魔法のアイテム「スライドバイブレーキ」なるものが誘惑する。侵入時やコーナリング中にリアブレーキで滑らせると、適度にスライド状態をキープしてくれるというコーナリングABSを応用したシステムだ。 このシステムをオンにし、フルバンク状態でリアブレーキをガンと踏み込んでみたが、速度が落ちるだけ…何事も起きない。まずは何をしても安全そうだ。 それでは、と、ストレートでフロントを強く制動してリアを軽くしてリアブレーキを強く掛けつつ寝かし込むと…微妙だが、寝かし初めで少しリアがスライドして、すぐに収まる。ほかにもいろいろ試したが「流れることがあるようだ」といった感触があるだけ。そこから先は個人のスキル次第だろう。 ハイパーモタード698モノはドリフト実践型のモタードではあるが、使い切れるパワーのスポーツモデルで、コミューター能力も想像以上に高い1台だ。
宮崎敬一郎