中田浩二・山本脩斗の両レジェンドを抜擢。体制強化で「優磨依存のチーム」をどう引き上げていくのか【吉岡宗重FDインタビュー②】
直近の神戸戦は1-3の逆転負け
「我々はこれまで数多くの選手を海外に送り出してきましたけど、大なり小なりの移籍金は取ってきました。 ただ、選手が『お試しで海外に行く』という時代はもう終わった。今回の海舟に関しても、かなりの金額で評価してもらえましたし、本人も世界で活躍し、ワールドカップに出るという夢を描いているはず。昨シーズンから海舟とは海外移籍のタイミングについて協議してきましたが、今回のオファーを総合的に判断して、我々もそれを後押したいと考えた。彼を売ることで確実に移籍金を取って、次の補強を迅速に進めていくことが重要なんです。 次のボランチ候補には岳もライコ(ミロサヴリェヴィッチ)もいますし、組み合わせで解決できるところもあると考えています」と、吉岡FDは佐野の売却で得られる資金を有効活用し、後半戦につなげていく構えだ。 そのうえで、チームの成熟度を引き上げ、勝点を積み上げていく必要がある。そのなかでやはり重要になるのは、鈴木優磨に依存しすぎないチームバランスを見出すことだ。 攻撃面の優磨依存というのは、昨年に比べて解消されつつある印象だ。が、チーム全体における彼の影響力というのは今もなお絶大である。30代の柴崎、間もなく30歳になる植田ら年長者たちも発信力を見せているものの、鹿島アカデミー出身で小笠原満男の40番を引き継いだ優磨には、「常勝軍団復活への強い意欲と責任感」が色濃く感じられる。 それを吉岡FDはどう見ているのか――。 「優磨がすごく重要なプレーヤーというのは誰もが認めるところですし、本人の勝ちへのこだわりや意気込みというのも絶大。ただ、チャヴリッチや濃野(公人)らがゴール数を伸ばし、得点力が分散していることもあって、優磨が背負っているものは昨年よりも少し軽くなり、本人も自分のプレーに集中できるようになったという見方をしています。 今季をスタートする前にポポヴィッチ監督と共有したのは『特定の個に頼るのではなく、組織で戦えるチームを目ざす』ということ。優磨は確かに頭抜けた存在かもしれませんけど、累積警告やアクシデントが起きた時に戦えないというチームだと優勝は難しい。私はそう考えています」 吉岡FDはこう語気を強めていたが、直近の6月30日のヴィッセル神戸戦では優磨不在の攻撃をうまく構築できず、昨季王者に1-3の逆転負けを食らってしまった。 最前線に陣取ったチャヴリッチがリスタートから先制し、最高のスタートを切ったのだが、ライン間に下りてボールをつなぎ、起点を作れる優磨がいなかったことで、攻撃がノッキングを起こしたのだ。 厳しい現実をどう受け止め、今後に活かしていくのか。今こそ強化部門と現場が一致団結して、難局を乗り越えていくしかないだろう。 ※第2回終了(全3回) 取材・文●元川悦子(フリーライター)