歌・音楽・サーカスが融合した音楽劇『空中ブランコのりのキキ』出演、5人のサーカスアーティストにインタビュー
東京・世田谷パブリックシアターが新たにスタートする夏のアートフェスティバル「せたがやアートファーム」。演劇、ダンス、音楽、サーカス、落語、さらにファッション、現代美術などのパフォーマンスやワークショップを通して、多くのアートと触れ合うことができる、さまざまな人が集うアートで満たされた場=農場を目指す。そのメインプログラムとしてこの夏上演されるのが、音楽劇『空中ブランコのりのキキ』。別役実の傑作童話数作品を原作に、劇団「快快」の脚本家・演出家・北川陽子が一本の音楽劇として再構築。同じく「快快」の俳優であり、振付家・演出家の野上絹代が構成・演出を手がけ、ジャンルを逸脱した特異なセンスを持つオオルタイチが音楽を手がける本作には、日本のサーカス界を牽引するサーカスアーティストも多く出演する。 【全ての画像】『空中ブランコのりのキキ』各サーカスアーティスト写真ほか 今回ぴあアプリでは5人のサーカスアーティストへのインタビューを実施。出演が決まった時の気持ちや担当するパフォーマンスについて、またパフォーマー目線での見どころポイントなどを語っていただいた。 ■吉田亜希(エアリアル)「空間で動く布の美しいラインも楽しんで」 出演が決まったときは、新たなものとの出会いを感じワクワクし、とても嬉しかったです。これからどんなふうにこの作品の中でサーカスパフォーマーとして存在できるか楽しみです。 エアリアルは空中パフォーマンスです。通常では生身で行くことの出来ない高さまで行き、縦ラインの空間で重力を自由に扱うように身体表現をします。今回はおそらくTissu(ティッシュー)という長い布を使うことになると思うので、空間で動く布の美しいラインも楽しんでください。 北川陽子さんの脚本はとても興味深かったです。サーカスという言葉だけでもワクワクしますし、華やかに見える側面を取り上げるのかと思っていたのですが、私たちパフォーマーも共感できる心情にフォーカスして話が進んでいるように感じました。パフォーマーでなくても、多くの方が人生の中で感じたことのある葛藤や固定概念に置き換えて共感できるかもしれないと思います。脚本が視覚化された時にどんな風に要素としてサーカスが使われるかとても楽しみです。演出の野上さん含め、初めてご一緒させていただく役者さんやクリエイターの方ばかりですが、演劇や音楽とサーカスが融合し他にはない化学反応が起きると思います。その瞬間を目撃してください。 公演に向けて、何度も脚本を読んで、妄想しています(笑)。Tissuの練習でもいろいろな存在の仕方を模索しながらサーカスの魅力をみなさんにどう伝えられるか考えています。わくわくドキドキと共に人生を楽しむヒントもみつけられるかも?な、リアルサーカスパフォーマーも参加する音楽劇です。ぜひ足を運んでください! ■サカトモコ(空中ブランコ)「パフォーマーは衣装も身体の一部。本番の衣裳にも注目して」 出演が決まった時はやったー!!と嬉しい気持ちでいっぱいになりました。週6でびっしりお稽古があり、集中して作品を創っていくのだなと身が引き締まりました。担当するのはスウィンギングトラピースと言うひとりで揺れるブランコなのですが、劇中に出てくるフライングトラピースと違い、飛んで違うブランコに飛び移る事はしません。4メートルのブランコが前後に揺れるので、ほかのサーカスパフォーマンスの中でも1番上空を使う演目になると思います。 北川陽子さんの脚本は、スーと読み進める事ができ、光景を想像することができました。とても不思議で、生と死を考える伏線があり、物語が丸い不思議な世界に包まれているようです。特に「愛のサーカス」の箇所が印象に残りました。また、何箇所か歌があるのですが実際にメロディにのせるとどうなるのだろうと楽しみです。北川さんが見事にひとつのお話に作り上げています! 見どころはやはり、ポスターやビジュアル写真からも見受けられる衣装に注目を置いています。と言うのも、私たちパフォーマーは衣装も身体の一部として動くので、衣装を身に纏うことで歩き方や姿勢が変わりそこからキャラクターや面白い動きに発展していくからです。本作ではどんな衣装があるのか今からすごく楽しみにしています。 夏休みに子供から大人まで楽しめる作品となっています。ワクワクするシーンから少し胸が苦しくなるような想いまで、一緒に体感しにこの『空中ブランコのりのキキ』の世界に入りに来てほしいです。 ■長谷川愛実(エアリアル)「日常ではなかなか見ない体勢や動きを観て楽しんで」 私はエアリアルという空中芸をメインアクトとしてやっています。長い布や鉄のフープを吊ってくるくると浮遊します。重力に逆らった日常ではなかなか見ない体勢や動きを紡いでいくので楽しんで観てもらえたらと思います。異なるジャンルの方々と舞台を創ることに興味を持っていたので、出演が決まった時は純粋に嬉しく、少し緊張しつつ、皆さんとのクリエイションが待ち遠しいです。 北川陽子さんの脚本は、異なるストーリーが美しく組み合わさっていてどんどん読み進められました。共感できるセリフが多くあり、すごくイメージしやすかったです。この脚本をどのように立体的に表現出来るのだろうと想像を巡らせてワクワクしています。舞台ではお芝居や音楽にとどまらず、多彩な表現が繰り広げられるのではないかと思います。演者一人ひとりがどのように登場し、融合するのか私自身も楽しみです。また、舞台上で声を発するという経験がとても少ないので、今回自分が声を発するかどうか、まだわかりませんが、発声の仕方の知識を少しでも取り込もうとしています。 どのような舞台になるか、私たちもまだ想像している段階ですが、きっと鮮やかで儚く美しい世界が広がると思います。私もこの世界の住人として楽しめるように頑張ります。多くの人に足を運んでいただけると嬉しいです。