初入閣9日目に衆院解散…「これからだったのに」 鹿児島3区・小里農相落選、全国有数の農業県に落胆広がる
全国有数の農業県鹿児島で現役農相の小里泰弘さん(66)=自民前職=が比例復活も逃し落選が決まった28日、県内の農林水産関係者に落胆が広がった。農相に就任したばかりで、これからの活躍が期待されていた。生産資材の高止まりや人手不足など現場では課題が山積する中、政権交代も取り沙汰され、政治の混乱による農業政策の後退を不安視した。 【写真】〈関連〉鹿児島3区で敗れた小里泰弘農相(右)。地元生産者からは落胆の声が漏れた=28日、薩摩川内市平佐1丁目
東町漁協(長島町)の山下伸吾組合長(64)は「漁協を挙げて応援していただけに残念」と漏らす。6、7月に八代海で発生した赤潮では、養殖ブリの被害額が1億円を超え、隣県と合同で国に支援を要請した。「内情をよく知る小里さんがいなくなれば、今後が不安」と口にする。 「現場の要望に耳を傾けてくれていた」と話すのは伊佐愛林(伊佐市)の坂上勝美取締役(53)。国内の人工林が利用期を迎える中、小里さんは国産材利用の推進や鳥獣被害対策を政策に掲げ、地元の座談会でもシカのジビエ活用を提案していた。「周囲では仕事ぶりへの評価は高かったが、女性問題が尾を引いたのでは」と惜しむ。 大臣就任から9日目に衆議院が解散。新内閣の発足で交代となる可能性が高い。県農協青壮年組織協議会の今村和也委員長(48)は「就任祝いのあいさつにも行けなかった。地元に理解があるからこそ、われわれの声がより届くと期待していたのに」と困惑する。
さつま町で露地野菜を作る男性(45)も「地元選出の大臣の方が、意向や要望が反映されやすい」と指摘する。野村哲郎参院議員や森山裕衆院議員の農相時代に実感した。全国農業協同組合中央会の会長はJA県中央会の山野徹会長(68)が務め、連携も期待されていた。今後の農政について「気候や消費者の好みは変化している。畜産や大規模農家ばかりフォーカスせず、必要な分野に予算が回るよう見直して」と注文した。 JA県中央会の山野会長は「わが国の食料・農業にとって極めて重要な局面で落選されたのは非常に残念。農業政策が後退することのないよう、総合的な政策の確立を期待する」とコメントした。
南日本新聞 | 鹿児島