俳優・田中道子さん 1級建築士試験に一発合格 二兎も三兎も追って描く建築への夢
ファンタジーな街をつくりたい
――どちらかというと、個別の建物というよりも都市計画、街づくりへの関心が強いのですね。 好きですね。いざやろうとすると、日本ではなかなか場所や機会がないのですが、静岡県裾野市にトヨタが実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」を造るという話が出たときは「わー、ゼロから、何もないところから街を造っていくのか。うらやましいな」って思いました。注目しています。 サウジアラビアでは「ミラーライン」という国家プロジェクトが進んでいます。長さ170kmもの板状の高層ビルを2棟平行して建てて、その間にスタジアムや公園などを造って街にしていこうという構想です。地震がないからできる建造物なんですが、絶対見に行きたいです。それぐらい魅力的な街には力があるので、日本でも海外の人に「日本ってこうなっているのか。見に行きたい」と思われるような街づくりをしてほしいし、いつか自分も参加したいなと思っています。 【ミラーライン】正式名称は「THE LINE」(ザ・ライン)。サウジアラビア・ネオムに建設が計画されている長さ170キロメートルにも及ぶ直線状のスマートシティー。ムハンマド皇太子の肝いりで2021年に発表され、建設予定地の掘削が始まっている。高さ500メートル、幅200メートルの鏡面仕様の細いビルを2棟平行に建てる構想だ。約200メートル離れたビルの間は、緑豊かな公共空間にするという。ただ、資金調達や現在の住民の移転で問題を抱えているとの指摘もある。 ――昔、SimCity(シムシティ)という街づくりゲームにはまったことがあります。 街づくり系ゲームはすごく発展していて面白いですよ。「シティーズ:スカイライン」というゲームはすごくリアルで、引っ越しされて廃虚だけ増えたりとか、環境汚染でみんな病気になってお墓が足りなくなったりとか。税金も決められるんですけど、税金が高くなるのは仕方ないなと思う側になっちゃいました。本当に税金、足りないんですよ。もう学校建てられませんみたいな。道一つ造るにも、ものすごくお金がかかるんです。それまでは、税金にぶーぶー言ってたんですけど、最近はしっかり払おうって思っています。 ただ、それまで好きだったファンタジーな街並みはできなくなってきちゃったんですよね。私は空飛ぶ車が作れるとか、そういうのが好きなので、よりリアリティーを求める人にお勧めです。 私は、トーマス・ヘザウィックさんという建築家の作品が好きなんです。米ニューヨークに「リトル・アイランド」という水上公園を造った方なんですけど、何かエノキが川にバーって生えて、その上が公園になっているんです。日本じゃ絶対無理だな、これすごいファンタジー感あるなと見ていたら、昨年完成した麻布台ヒルズ(東京都港区)でも設計していることを最近知りました。まだ行けてないんですけれど、前を通るたびに「かっこいいなあ」なんて言っていました。建物でもファンタジー感のあるものが好きですね。 ――海外に比べて、日本では同じような四角い建物が並んでいるような印象があります。 よく言われますね。法律が厳しい中で、スペースはたくさん下さいというクライアントの要望に応えようとすると、真四角のものが建つんです。製図試験の時に、みんな独自性を出すな、クライアントの言うことを忠実に守れって指示されると、全員真四角の箱のビルになりましたから。基本、日本人の考え方なんだと思います。 設計士が自分らしさを出す前に、クライアントの要望を守ったり、使いやすくて、スペースをちゃんと広く、最大限収益が上がるようにしようというのが大本にあって、プラス厳しい法律をかいくぐるとなると、そうなりがちなのも分かります。 日本には災害とかが多いから真四角になるのも理解できる。でも、もっと魅力的なものを見たい。その中間のところで、私は今せめぎ合っています。