最後の青龍描き古都護る神獣「四神」完成 警察署の壁画に82歳絵師キーヤンが込めた思い
平成25年、京都府警中京署のコンクリート壁面に都の西を護る「白虎(びゃっこ)」を描いたのが、四神のスタートとなった。
当時、警察署の統廃合により中京署が新設されたものの、「敷居が高くてなんだか近寄りがたい」。当時府警本部に勤務していた田中博巡査部長(55)が聞きこみで地域住民のそんな声を耳にし、一計を案じた。「木村先生の壁画があれば、気軽に警察署に出入りしてもらえるのではないか」
警察署の壁に直接絵を描くのはいかがなものかと、当初は抵抗感があったという。そこで、田中巡査部長は近所の子供たちに絵の色付けに参加してもらうことを提案。「親や地域住民も集まり、警察を身近に知ってもらえる。署員との交流も生まれ、長く親しまれる機会になる」(田中巡査部長)。色付けは近所の子供たちだけでなく、非行少年の立ち直り支援の一環としても行われた。その後、同署は子供たちの登校時の集合場所にもなった。
現在では、インバウンド(外国人訪日客)が写真撮影のために気軽に訪れる観光名所にもなっている。
■巡ってきた好機
当初、中京署に何を描くかは木村さんに任せていた。「四神は京都に描いてこそ意味がある。大阪や東京ではダメだ」
四神は中国の風水を基に、四方の方角を守護する空想上の生き物。桓武天皇は延暦13(794)年、四神が存在するのにふさわしい場所として京都を選び、平安京を開いた。いつか四神を京都の街に描きたいと思っていた木村さんに、絶好のチャンスが巡ってきたのだ。
28年には南署に「朱雀」をイメージした赤いクジャクを、令和3年には京都市消防局北消防署に「玄武」をイメージしたカメを描いた。木村さんは「京都の街は古いが、新しいことに挑戦できる街。四神も昔の絵をなぞるのではなく、私流で描いた。安心して暮らせる街になってほしい」と目を輝かせた。(田中幸美)