公立希望が7割切った大阪 無償化で変わる「十五の春」 6年入試では70校で定員割れ
■橋下改革が源流、無償化だけじゃない私立人気の理由
大阪府での私立人気はここ10年ほどの傾向でもあるが、関係者たちに聞くと、人気上昇の要因は「無償化だけではない」という。
大阪府内の中学校長会の担当者は、私学人気の理由に「試験日程」をあげる。私立入試は3月に行われる公立入試より1カ月ほど早い。担当者は「少しでも早く入試を終わらせたいと願う親子は意外に多い」と話す。
府教育庁のある担当職員は「進路の多様化」を指摘。私立の通信制進学者が増えていることも関係しているとした。
また、開成教育セミナーの担当者は「公立の魅力低下」をあげた。私立に比べ「部活動などの活気が失われている公立もある」という。
さらに、大阪府内の私学経営者の一人は「平成23年に当時の橋下徹知事が公立と私立の間の取り決めを撤廃したことが大きい」と話した。公私間で、定員割合を「7対3」にするという申し合わせで、撤廃以降、生徒獲得に向け私立側に競争原理が働いたという。
公私間での募集比率をめぐっては、東京都は都立と私立で「6対4」とする申し合わせがあり、志願動向に大きな変化は見られないという。兵庫県でも公立中から全日制高へ進む生徒のうち毎年15%前後が私立高へ進学。「前年度と比べ大きな差が出ないよう公私の担当部署で話し合っている」(担当者)という。
こうした状況のもと、大阪府教育庁も公立高の入試改革を進めている。
現在の小学6年が高校受験を迎える令和10年度をめどに、大幅な入試制度改革を実施。毎年3月に実施していた一般選抜と2月中旬の実技を伴う特別選抜を一本化して2月下旬に行う予定だ。
名目は、入試時期を早め、引き継ぎが必要な生徒の情報を中高で共有し、受け入れ態勢を整えやすくすることだが、私立側は「入試が早い私立への生徒の流出を防ごうとしている」と反発。公立中の関係者からも「入試日程の前倒しに合わせ授業進度を早める必要が生じる」との声があがり、公立の入試改革の動向に注目が集まっている。(木ノ下めぐみ)