【アンガールズ・田中卓志さんのお悩み相談】「価値観の合わない親に会うのがおっくう」という悩みにズバッと回答！
働く30代が抱える日々のもやもやを、一見冴えない（!?）アンガールズの田中卓志先輩にぶつける連載【隣の部署の田中先輩】第16回！ 今回は、地方に住む両親と都心で働く自分の価値観がどんどん合わなくなって実家を避けてしまっているという悩みに田中先輩が的確アドバイス！ 【写真】アンガールズ・田中卓志さんのお悩み相談まとめ
《今月のお悩み》親との価値観がズレてきて会うのがおっくうに…（35歳・教育関係）
地方に住む両親と都心で働く自分の価値観がどんどん合わなくなっているのを感じます。特に父は保守的で、結婚をせかされるのも嫌なので、自然と実家を避けてしまっているところも。素直に親孝行したいし、本当は親のことを嫌いなんて思いたくないのですが、どうしたらいいでしょうか。
田中先輩の答え…理解しあえないものに「理解」を求めるから悩むんです
■環境だけでなく世代も違う親は自分と違って当たり前 僕が生まれ育ったのも山奥の山の頂上みたいな、最上級の田舎でした。小川に投げ込んだ葉っぱを追いかけながら一緒に登校して、放課後は知り合いの家の庭にたわわに実った柿をもらって食べながら下校する……。自然豊かな環境の中でのびのびと育った僕は、幼少期、一人で電車に乗ったことすらなかったから。上京したときは本当に驚きましたよね。「ひざ下くらいの小学生が一人で満員電車に乗っている‼」って。 お笑い芸人になるため、両親に「大学院に進学する」と噓をついて上京。あれから約24年、今はもう、電車の中の小学生にもゴスロリファッションの女の子にも驚かなくなりました。でも、それは僕が実際に東京で暮らし東京のリアルを知ったからで。それを知らない田舎の家族にとって東京はずっと怖いキケンな街のまま。上京当初はテレビで東京の悪いニュースが流れるたびに「卓志が巻き込まれているんじゃないか」と心配。噓をついた気まずさから実家への連絡が滞った時期なんて「卓志は東京で殺されたのかもしれない」と思われていましたからね、マジで。 お笑い芸人になってからは母と一緒にバラエティ番組に出る機会が増えた。そのとき、母が選ぶ交通手段はいつも高速バスでした。飛行機でも新幹線でも、スタッフさんがチケットを用意してくれるのに高速バスを選ぶ理由は「それしか乗ったことがないから」。利用経験のない新幹線や飛行機はちょっと怖かったんでしょうね。その証拠に、僕と一緒に飛行機に乗ってからは「なんてラクなんだ」と、そこから母が選ぶ交通手段は飛行機一択になりましたから（笑）。 田舎で暮らす両親にとって、知らないことは怖いし、理解するのも難しい。どんなに言葉で説明したところで、東京の価値観はきっと伝わらない。今回の相談者さんはそんな両親に「理解してくれるんじゃないか」と期待するから悩んでしまうんじゃないかな。 田舎では独身というだけで「結婚はしないのか？」と親から圧をかけられることが多いと思う。僕自身もずっとそうでした。でもさ、親も同じように周りから「お宅の子は結婚しないの？」と言われているんだよね。そこで、できることと言えば「まあまあ」と受け流すことだけ。独身女性がバリバリ働いている東京の環境を理解しろと言ったところで、それを見たことがない人には難しいしね。また、田舎と東京の差だけでなく、親とは世代の差もあるから。東京でも年配の方と価値観をすり合わせるのは大変なわけで、それを田舎の親に「理解してくれ」と求めるのはちょっとかわいそうな気もするよね。 田舎で暮らす親と東京で暮らす自分の価値観が違うのは当たり前。だからこそ「そんなもんだ」と受け流すのがベストだと僕は思います。受け流せないときは離れて暮らす田舎の両親とあと何回会えるか、数えてほしい。お盆と正月で年に2回、それがあと10年なら20回、20年なら40回、残された回数は決して多くはないはず。どんなに親孝行をしても、最後には必ず後悔が残るもの。僕自身、母を亡くしてからは後悔だらけです。だからこそ、やっぱり思ってしまうんだよね。色々思うことはあるかもしれないけれど、今会える、一分一秒を大切にしてほしいなって。
田中卓志 たなか たくし●1976年生まれ、広島県出身。大学時代の友人、山根良顕とお笑いコンビ「アンガールズ」を結成。「呼び出し先生タナカ」（フジテレビ系）など多数のバラエティで活躍中。 撮影／黒沼 諭〈aosora〉 ヘア＆メイク／高橋将氣 スタイリスト／高山良昭 イラスト／ますこえり 取材・原文／石井美輪 撮影協力／アワビーズ ※BAILA2024年1月号掲載
