奥山由之監督×10人の俳優たち、オムニバス長編映画『アット・ザ・ベンチ』メイキング映像公開
映画監督・写真家の奥山由之が自主制作したオムニバス長編映画『アット・ザ・ベンチ』の撮影風景を収めた、8分間にわたるメイキング映像が公開された。 【動画】8分間の貴重なメイキング映像 本作は、川沿いの芝生の真ん中に置かれた一つのベンチを舞台に、今日を生きる人々のちょっとした日常を切り取ったオムニバス。広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡山天音(第2編)、荒川良々(第2編)、今田美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草なぎ剛(第4編)、吉岡里帆(第4編)、神木隆之介(第4編)が出演している。 11月15日より東京・大阪の3館で上映がスタートし、現在は60館で順次拡大上映が決定。本作の舞台となった多摩川遊園のベンチに実際に訪れたことを報告する声がSNSでも多数寄せられ、観客の間では聖地化している。 今回、公開されたメイキング映像に収められているのは、第1編から第5編までの四季折々の撮影風景。キャストとスタッフの多忙なスケジュールをぬって、全員がそろうことのできる日にベンチに集合し、1編ずつを1日という短い時間のなかで撮影していった、現場の和やかな雰囲気が感じられるメイキング映像となっている。 冒頭に映し出されるのは、第1編で広瀬演じる莉子がベンチで電話をかけるシーン。カメラには映らない少し離れた場所には徳人役の仲野。広瀬は実際に仲野と電話で話しながら演技をしていたことがわかる。季節は蝉の声が響きわたる夏の盛りで、日差しを避けながら携帯用の扇風機を顔に当てている様子からも暑さが伺えるが、演技をする広瀬の表情は涼しげだ。生方美久氏が脚本を手がけた第1編と第5編では、ベンチの“顔”とも言える背後からの撮影に徹したというが、映像の中では奥山監督が2人の背中を見つめ続ける姿を目の当たりにすることができる。 小春日和の日差しのなか、岸井、岡山、荒川の3人が繰り広げるのは、本編では見られない第2編の未公開シーン。岡山ふんする貫太が持っている寿司のパックから「甘いの食べちゃったからさ」と、口直しにガリを取ろうとするのは奇妙なおじさん・国枝役の荒川。それに対して「触ったなら全部食べてくださいよ」と貫太が苦言を呈するが、国枝はマイペースを崩さない。「ガリはちょっとずつ食べるもんでしょ。後で食べるから置いておいて」「いや、ここみんなの場所じゃないから!」と演技巧者たちがアドリブのやりとりを披露する。それを見ながら思わず吹き出してしまう奥山監督に誰もが共感してしまうことだろう。 悪天候を望んでいたという監督の思惑通りの第3編。曇天の寒空の下、防寒着を身につけてクランクインする今田と森。雨に降られながらも爽やかな笑顔でスタッフと言葉を交わす2人だが、撮影が始まると一変。今田演じる「姉」はわめき散らして暴言を吐き、森演じる「妹」から逃げながら狂乱ぶりを見せる。しかし、カメラが止まればすぐさま仲睦まじげに笑い合う今田と森のギャップが微笑ましい。 そして、5つの物語のうちでも最も異彩を放つのは、奥山監督自身が脚本を手がけた第4編。区役所のユニフォームに身を包んだ草なぎと吉岡、撮影スタッフのような出立ちの神木。途中、画面の外でキュルキュルと何とも形容し難い動物の鳴き声のような「宇宙語」を発しているのは、どうやら草なぎと吉岡のようだが、奥山監督に代わりカメラを覗きながら「はいカット!」と声をかけるのは神木。メイキングを見るだけでも、その本編の一風変わった様子が伝わる。 ラストの第5編。休憩中の広瀬と仲野が親しげに会話する背中が映し出されるが、もはや莉子と徳人そのものに見える。スーツ姿の仲野と並んで座っている広瀬は、第1編では下ろしていた前髪を上げ、少し伸びた後ろ髪から時間の経過が伺える。太陽の位置が低くなるのを待っていることを2人に伝える奥山監督は夕暮れのシーンを狙っているらしい。陽が暮れる直前、すべての撮影を終えてクランクアップ。キャスト・スタッフが拍手するなか、奥山監督の「楽しかったです」という一言に、『アット・ザ・ベンチ』という作品全体のムードが現れているのではないだろうか。