遺言書を書いているのですが、「遺留分」を無視して配分を決めても問題ないでしょうか?実際に相続が発生したとき、遺産がどうなるのか心配です。
自身が亡くなったあと、できる限りの財産を残してあげたい人がいるかもしれません。または、少しの財産も渡したくない人もいるかもしれません。遺留分を無視して書いた遺言書は有効なのか、また遺留分はどうなるのかを、この記事で解説します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人が最低限受け取れる遺産のことです。遺留分に相当する遺産を受け取ることができない(遺留分が侵害されている)場合、相続人は遺留分を請求する権利があります。ただし、遺留分を請求するかどうかは権利者に委ねられていて、必ずしも請求しなければいけないわけではありません。 また、遺留分を請求する手続きのことを「遺留分侵害額請求」といいます。なお、2019年7月1日の民法改正以前の制度では、この手続きは「遺留分減殺請求」と呼ばれていました。遺留分侵害額請求が金銭の請求であることに対し、遺留分減殺請求は、原則として現物の返還を求める制度であった点が、主な違いです。 ■遺留分の対象者 法定相続人でも、全ての人に遺留分があるわけではありません。遺留分侵害額請求ができる人を「遺留分権利者」といい、以下の人が対象となります。 ・被相続人の配偶者 ・被相続人の子(亡くなっている場合は孫) ・被相続人の直系尊属(父母や祖父母) ・認知されている非嫡出子 兄弟姉妹、甥姪には遺留分はありません。 ■遺留分の割合 遺留分の割合は「法定相続分の2分の1(被相続人の直系尊属のみが相続人である場合は3分の1)」となります。法定相続人と法定相続分・遺留分の割合の関係を表にすると、表1のようになります。 表1
■遺留分侵害額請求の対象となる贈与もある 遺留分侵害額請求の対象となるのは、遺言による相続分だけでなく、被相続人が生前に行った贈与なども含まれます。例えば、以下のような生前贈与などが対象となります。 ・相続開始前1年以内に相続人以外に対して行われた生前贈与の全て ・相続開始前10年以内に相続人に行われた特別受益に当たる生前贈与 ・遺留分権利者を侵害することを知った上でした贈与 ■遺留分侵害額請求の期限 遺留分が請求できる期間は「遺留分の侵害を知った日から1年以内」となっています。また、遺留分が侵害されていることを知らなかったとしても、相続開始から10年経過すると時効となり、遺留分侵害額請求はできなくなります。