「陸上界の新星」16歳の久保凛 世界陸上への挑戦は緊張より「ワクワク」
日本のメダル獲得が相次いだパリ五輪。日本勢のさらなる躍進に期待がかかるなか、陸上界で注目されている選手がいる。陸上女子800メートル日本記録保持者の久保凛さんだ。サッカー日本代表の久保建英のいとこで、その潜在能力に注目が集まっている。・AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 「陸上界の新星」16歳久保凛さんの2025's My Trendはこちら * * * 1分59秒93。 陸上女子800メートルで日本人初の1分台となる日本新記録は、2024年7月15日、奈良県で行われた小さな記録会で出た。会場となった橿原公苑陸上競技場は、大型スクリーンやウォーミングアップをするためのサブトラックのないこぢんまりとした場所だ。 まさか、ここで。関係者が息をのむ圧巻の走りで大記録を叩き出したのは、久保凛さん(16)。東大阪大学敬愛高校2年生だ。 「調子があがっていたので、高校記録(2分02秒57)が出たらいいなと思っていたら、1分台が出てびっくり。前半もリラックスできて、後半も落ちなかった」 それまでの自己ベストを3秒以上縮め、杉森美保さんが2005年に出した2分0秒45の日本記録までも更新。25年9月、東京で開催される世界陸上出場がはっきりと視界に入ってきた。 そんな陸上界の新星に会うために、12月中旬、東大阪市にある東大阪大学敬愛高校を訪ねた。朝から小雨が降る日だったが、久保さんはチーム名の入った襷をかけて快調に走っていた。 身長168センチ。手足が長く、そのフォームは遠くからでも一瞬でわかるほど際立って美しい。バネがあるものの、跳びはねるような動きではなく、足が大きな円を描きながら、軽やかにどんどん前に出ていく。 走っていたのは、土のグラウンドと舗装された校内の通路をつなげてつくった600メートルの周回コースだ。土のグラウンドのトラックは250メートルしかないため、同校陸上部の野口雅嗣監督が自ら整備したという。「恵まれた環境ではないものの、だからこそ謙虚に努力できる。自ら工夫できる選手は伸びます」(野口監督)