伝説のアーケードゲームがSRPGに! モーデン元帥の野望をいま再び食い止めろ『METAL SLUG TACTICS』レビュー
1996年、SNKより発売されたアーケードゲーム『METAL SLUG』。多くのナンバリング作品が発売された有名シリーズだが、この度シミュレーションRPG『METAL SLUG TACTICS』として生まれ変わった。 【画像】名作がSRPGで蘇る! 『METAL SLUG TACTICS』のスクリーンショット 非常に戦略的なSRPGでありながら、随所にラン&ガンやチームプレイの面白さを表現できている意欲作であり、時間を忘れて楽しめる絶妙な調整がなされていた。 シリーズ伝統と言える美しいドット絵や、B級映画チックな世界観も健在である。 ■ペルグリン・ファルコン隊が挑む(思ったよりも緻密な)決死の作戦 『METAL SLUG』は、ペルグリン・ファルコン隊という特殊工作部隊が、軍事クーデターを企てるモーデン元帥を止めるため、高性能小型戦車「メタルスラッグ」に乗り込んで彼の部隊を殲滅することが目的のゲームである。 本作も相変わらずモーデン元帥がまたしても作戦を企てていたのでそれを止めるというド鉄板な導入であり、実家のような安心感に包まれる。だが、ゲーム部分はとても新鮮だった。 まずは部隊編成。おなじみの主人公マルコと、育ちの良いフィオ、メンフィスの爆弾娘エリが初期メンバーだ(ゲームを進めていくと他のキャラクターも使えるようになる)。 本作は『Into the Breach』のようなローグライト形式だ。モーデン元帥がいるシロッコ・シティを合わせて四つのマップがあり(初期マップ以外は)どのマップから攻めても構わない。 戦闘はオーソドックスなクォータービューのマス目式であり、部隊メンバーをスタート位置に立たせてから始まる。マルコはシンプルな銃撃戦が得意で、フィオは多種多様なアクションを持ち、エリは爆発物を扱う……といった具合で、それぞれに得意分野が異なる。 移動とアクションに1ポイントずつ使用し、敵を全滅させたり、特定のポイントまで向かったり、味方NPCを守り切ったりするのが目的で、この辺もよくあるSRPGではある。 本作のユニークな点は「アドレナリンポイント」と「シンクロ」というシステムだ。 アドレナリンポイントというのは、各キャラクターのアクティブスキルを発動するのに必要なポイントだ。それを溜めるには「走る」必要があり、現在地から1ターンでどれだけ遠くまで移動したかによって入手量が多くなる。また、ついでにアーマーも手に入るので、基本的には移動しまくったほうが得だ。 この仕様により「METAL SLUG」シリーズのラン&ガン的遊びを表現できているだけでなく、SRPGにありがちな、敵が来るまで同じところで待つ「牛歩戦術」を縛っているのが素晴らしい。 そして、シンクロというのは、敵を攻撃する際、味方の誰かの射線上にその敵がいた場合、攻撃に参加してくれるというものである。 これ自体は「ファイアーエムブレム」シリーズなどでも見かける仕様だが、『METAL SLUG TACTICS』ではキャラクターの火力が低めに設定されており、キャラクターひとりの通常攻撃だけではザコ敵を一体倒し切るのは難しくなっている。よって、なるべくキャラクター同士を上手いこと十字砲火の形に配置して、何度も何度もシンクロを起こす必要があるのだ。 ステージをクリアすると、マップ間のショップパートで使用できるコインや、キャラクターのスキルや武器強化、戦闘中に使用できるアイテム(あの「メタルスラッグ」もある!)などさまざまな報酬が手に入る。このスキルや武器の強化も、それだけ切り抜くと当たり前の要素だが、どれもこれも一長一短な性能で、しっかりと理解して使っていく必要がある。 ちょっと敵が多すぎるように見えるマップでも、スキルを理解し、走り回ってシンクロを起こしまくれば、ぎりぎりクリアできる調整なのがたまらない。本当に困ったときはメタルスラッグを呼べば何もかも薙ぎ倒してくれるので、とても爽快だ。 モーデン元帥の陰謀を止め、ゲームをクリアするごとに、達成度に応じてコインが手に入る。そのコインでもって新しい武器や仲間の兵装を変えることで、より難しいミッションに挑戦する……といったローグライトの面白味もちゃんと用意されている。仲間キャラクターとのちょっとした会話もアンロックされるぞ。 ただのスピンオフだと流すにはもったいないくらい、SRPGファンとメタスラファンを心底から喜ばせる奇跡の出会いであった。描画や処理においてバグがあり、時折ロードし直さなければならないことも何度かあったが、それ以外はほとんど隙がない一作だった。
各務都心
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