新NISAの恩恵を最大化させる配当株投資の「増配」とは?
企業が「増配」していればいいわけではない
企業による増配が配当金を増やすための成長エンジンであるならば、単純に「増配している企業を選べば、配当金の増加が見込める」と考えるかもしれませんが、必ずしもそれが正解とはいえません。記録的な連続増配をしている企業に投資しても、あまり増配の恩恵を得られないケースがあるからです。 例えば、日用品や化粧品の大手メーカー・花王は、1991年3月期以降、連続増配を継続しており、2024年12月期の配当予想「152円」が実施されれば、35期連続の増配を達成することになります。これは自ら更新してきた連続記録を塗り替えて、日本の「連続配当ランキング」の第1位になるなど、花王は「増配企業」の代表格です。 ・配当金:70円(14年12月期)→「152円」(24年12月期) ・増配率:2.17倍 ・配当利回り:2.63% 先に紹介した6つの大型銘柄の増配率は2.25倍~5.19倍、配当利回りは7.7%~12.1%でしたから、その数字と比較するとやや見劣りしてしまいます。連続して増配はしているものの、増配の恩恵はそれほど多くはないということです。 企業が増配する場合、業績が堅調で、企業の「稼ぐチカラ」(収益力・成長性)を示す1株益が上昇していることが大切になりますが、花王の場合は2019年から1株益が減少しているにもかかわらず、それと反比例して増配を続けている状態です。 その背景には様々な理由があると思いますが、増配を続けることで配当性向(当期純利益に占める年間配当金の割合)が徐々に高まっていることから、「企業の成長のための新しい投資をせず、増配の連続記録が目的化しているのではないか」という見方まで出ています。 このように、増配が続いてもそこに業績や1株益の上昇が伴わないと、取得利回りが上がらず、増配の恩恵には結びつかないこともあるのです。
「取得利回り」を上げるための2つのアプローチ
配当金投資の恩恵を大きくしていくためには、取得利回りを上げることが大切です。そのためのアプローチには2つの方法があります。 1つは、これまでお伝えしてきたように、安定感のある企業の株を買って持ち続けることで増配の恩恵を受けること。もう1つは、業績が堅調で株主還元も積極的な企業の株を、世界経済の影響などの外的要因によって下がったときに買うことです。こうしたケースでは、配当利回りが跳ね上がる可能性が高いため、十分に増配の恩恵を受けることができます。 つまり、淡々と株を買い進めることによって、この2つを上手に取り込んでいくことが大切なのです。長期的に株を買い続けていくと、株価が大きく下がるような局面に遭遇することもあるため、そのときは一段ギアを上げて買うことを意識していれば、配当利回りの恩恵を即座に受けることができます。 配当株投資を始めると、「できるだけ株価が安いときに買いたい」という気持ちが芽生えますが、株価が下がるのを待っている間に、企業が増配して株価がさらに上がってしまう、というケースは意外によくあります。株価の値動きばかりに目を奪われるのではなく、「自分が買えるときに買う」「買って持ち続ける」「その過程で株価が下がったら、さらに多く買う」といった意識を持つことが大切です。
配当太郎(投資家)