プリウス「スーパーカー化大作戦」は成功? ハイブリッド車に逆襲の兆し
30年近く、世界を代表するハイブリッド車(HV)として売れ続けるトヨタ自動車の「プリウス」。2023年1月に登場した5代目は、まるでスーパーカーのような大胆なスタイリングを採用し、1~4代目との違いに驚いた人も多かったはずだ。発売から1年がたち、実際売れているのか。取材を進めると国民的な支持は衰えていないことが分かった。いったいなぜなのか……。 【関連画像】フロントピラーは寝そべるように配置されており、高さが抑えられ長い。まるでイタリアのランボルギーニ製モデルのようなスタイリングだ 「お客様からは、新型プリウス変わったねという声をたくさんいただいてまして一定の成果は出てるかと」(トヨタ副社長の中嶋裕樹氏) 2023年1月に発売し、突如大変身を遂げたハイブリッド車、5代目プリウス。登場からほぼ1年が経過したが、評判は上々のようだ。その変貌が意味するところは、ある意味プリウスの“スーパーカー化”であり、ハイブリッド車の再定義だ。 ご存じかもしれないが、初代プリウスは今から27年前の1997年に「21世紀に間に合いました」と話す鉄腕アトムの名ゼリフのテレビCMと共に登場。世界初の量産ハイブリッド車として、世界累計で577万台と素晴らしい販売実績を積み上げ、ハイブリッド車の代名詞的な存在となった。 初代の発売直後の燃費は10・15モードで28.0km/Lと良かったが、215万円と当時としては高価格だったこともあり、さほど売れなかった。「売るほど赤字」とも噂されたが、2代目から本領を発揮。一時は米ハリウッドで活躍する俳優のレオナルド・ディカプリオ氏の愛車としても広く知られ、低燃費で環境に良いとして、ロンドンをはじめとする海外の大都市ではタクシーとしても愛された。 しかし今やハイブリッド車は、世の中で完全に当たり前になった。トヨタではコンパクトなヤリスやカローラをはじめ、多目的スポーツ車(SUV)のRAV4やハリアー、高級車のクラウンや社用のセンチュリーに至るまでハイブリッド車が用意され、逆にハイブリッド車を選べないトヨタ車の方が少ないほど。グローバル市場向けでも、新型ランドクルーザー250でもハイブリッド車が選べ、ざっくりエンジン車のみしかないトヨタ車というとハイエースとコースターぐらいしか思い浮かばない。 とはいえ今は、バッテリー電気自動車(BEV)の方がエコカーとしてもてはやされている。なにしろ23年に世界で一番売れた乗用車はトヨタのカローラでもなければRAV4でもない。米テスラがつくったバッテリー電気自動車、モデルYなのだ。その数は120万台以上で、まさに時代の流れを象徴している。 こうした状況を踏まえて、前出のトヨタ中嶋副社長は次のように言う。「(ハイブリッド車についてトヨタは)第1章の役割を十分に果たした。第2章へ進めようかという議論があり、その中で『(5代目は)タクシー化する』という意見が、豊田章男社長(当時)から上がったのも本当なんです」 ●国内ハイブリッド車販売台数で実質“ほぼ1位” ところが議論を尽くした結果、悩みに悩んだトヨタが生み出したのが現行の5代目プリウス。繰り返しになるが、極端なスーパーカー化を遂げたのである。全長4.5m超えで、5人乗りできるハッチバックのフォーマットを守りつつ、まさにスーパーカーのような極端に“ペッチャンコ”なスタイリングを初めて採用したのだ。 象徴的なのがフロントピラーで、イタリアのランボルギーニ製モデル並みに寝そべるように配置されており、高さが低くてしかも長い。明らかに燃費よりスタイルを取ったデザインなのだ。事実、開発エンジニアは、WLTCモード燃費はルーフ高のピークをもっと前に持ってきた方が良くなることを認めている。 その発売から1年たった新型プリウスは、世の中でどう受け入れられたのか。先日イベントで会った5代目チーフエンジニアの大矢賢樹氏に、感触を直撃すると……。