【アパレル大手7社の直近EC業績まとめ】目立つEC化率の減少 アフターコロナの影響顕著
アパレル企業は8月と2月に決算期を迎える企業が多い。アパレル大手7社の8月期の通期決算と2月期の中間期決算をまとめた。今回、取り上げる7社のうち、3社のEC化率がマイナスになった。 <一覧表>「アパレル大手7社」直近のEC売上とEC化率 これまでEC売上高を大きく伸ばし、EC化率も右肩上がりを続けてきたが、アフターコロナのリアル回帰の影響を受け、伸びるリアル店舗の売り上げと、伸び悩むEC売り上げの実績が数字に表れている。 【ユニクロ】EC成長は鈍化傾向 ユニクロのEC売上高の増減率は、前期(2023年8月期)と同じ2.3%増だった。アフターコロナでリアル回帰が進む中、EC事業の成長は鈍化傾向にある。 世界的デザイナーと組んだ高付加価値のオリジナルブランドを展開しており、リアル店舗で試着してから購入する顧客が増えているようだ。 【ジーユー】EC売上高が8%増 ジーユーのEC売上高は、同約8%増だったという。EC化率は約12%となった。EC化率から推定したEC売上高は約382億円となる。 ジーユーは米国に海外初の旗艦店を開設し、現地ECサイトも出店している。グローバルでのオフライン、オンラインの展開も強化する。 【アダストリア】増収もEC化率は減少 アダストリアの2024年3‐8月期(中間期)における国内アパレル事業のEC化率は前年同期比0.2ポイント減の27.2%だった。自社EC「and st(アンドエスティ)」の売上比率は、横ばいの14.7%となった。 リアル店舗を連動させたプロモーション、企業や人気キャラクターとのコラボ商品などの集客施策を継続的に実施したことで、EC売上高は増加したが、リアル店舗がそれ以上の増収となり、EC化率は減少した。 【パルグループホールディングス】自社ECは18.4%の増収 パルグループホールディングスの2024年3‐8月期(中間期)のEC売上高は、同10.3%増だった。「ZOZOTOWN」の売り上げは同3.4%増の117億7200万円だった。自社EC「PALCLOSET(パルクローゼット)」は、売上高が同18.4%増となるなど、EC部門の増収をけん引した。 スタッフが発信するSNSが、成長の一因になっているという。スタッフ個人のSNSアカウントで、継続的に情報発信を行っている。 同社のアプリ会員数は1054万人を突破(8月末時点)したとしている。2025年2月期は、アプリの会員数を1200万人に増やすことを計画しているという。 【オンワードホールディングス】OMOが増収寄与 オンワードホールディングスの2024年3‐8月期(中間期)における国内EC売上高は、同5.5%増だった。EC売上高の85.5%を自社ECサイトが占めた。OMOサービスの利用拡大などにより、EC売り上げも成長している。 酷暑に対応した機能性商品の販売が好調だったことに加え、OMOサービス「クリック&トライ」の利用が拡大したという。EC化率は同0.1ポイント増の29.4%だった。EC化率は引き続き30%程度をキープしたい考えだ。 【TSIホールディングス】ブランド撤退の影響でEC減収 TSIホールディングスの2024年3‐8月期(中間期)における国内EC売上高は、同1.6%減だった。ブランド撤退により減収となったが、その影響を除くと前年並みの業績だったという。 「UNDEFEATED(アンディフィーテッド」」の代理店契約終了に伴う撤退の影響が大きく、EC業績は減収となった。EC化率は同1.3ポイント減の26.9%だった。 国内については、自社ECサイトと外部モール間の在庫一元化を順次進めており、在庫効率の上昇が売り上げに寄与しているという。 【しまむら】後発のため高成長続く しまむらの2024年3‐8月期(中間期)におけるEC売上高は、同94.9%増となった。しまむらはEC事業の開始が、他のアパレル大手と比べて遅く、EC事業を急速に強化しており、高成長が続いている。 今期はインフルエンサーやキャラクターとのコラボ商品が好調に推移した。秋冬物の先行予約販売を実施し、多くの注文を獲得することにも成功している。2025年2月期の通期では、EC売上高が100億円の大台を突破する見通しだ。
「日本ネット経済新聞」記者 手塚 康輔