『降り積もれ孤独な死よ』は成田凌の足跡を刻む一作に 悲劇の連鎖止める確かな意志
「降り積もる死」から「生」への転換
「私が死ねば全部終わる。何もかも断ち切れる」と口にする花音は、一人で罪を背負って逝った灰川の遺志を受け継いでいる。けれども、花音が命を絶ったとしても、憎しみの連鎖は終わらない。タイトルになった詩には続きがあって、それは命が続いていくことの奇跡を示唆していた。視点を変えて、灰川の家族は世間的に見れば日陰者の日の当たらないポジションの人間だ。居場所のない人々が反目して傷つけあうのではなく、互いを守ること。そのために目の前にある生を重ねる「死」から「生」への転換は、本作が伝えるメッセージの到達点だった。 入り組んだ構図の作品をドラマとして成立させるにあたり、主演である成田凌の存在を抜きにして語ることはできない。吉川愛、小日向文世、萩原利久ら演技巧者がそろう共演陣とのシーンが印象深いものになったのは、過去から現在にわたって場面によって変化する心情を繊細にキャッチし、投げ返す成田の自然なたたずまいと作品への理解がもたらしたと言えるだろう。連続ドラマでは『逃亡委F』(日本テレビ系)、『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)と演技で魅せる良作が続いており、今作は充実期を迎える成田の新たな足跡を刻むものとなった。
石河コウヘイ