2.8億円を投じても回収しきれない...長崎県対馬の海洋ごみ問題と、日本人の「海離れ」
日本人の「海離れ」と「まずは子どもたちに」の新プロジェクト
日本にとって海は世界とつながるための扉でもあり、豊かな食文化を届けてくれる大切な存在だった、はず。ところがこのところ「海離れ」が広がっているという。 日本財団が7月11日に発表した「第4回 『海と日本人』に関する意識調査」(2年に一度実施)によれば、7割が「海は大切な存在だと答えている一方、「海にとても親しみを感じる」人はわずか31%。2019年の調査に比べ13%も減少している。「この1年で一度も海を訪れていない」人は52%にのぼる。コロナ禍があったとはいえ、海との接触の少なさが海への愛着の薄さにつながっているといえそうだ。 海が遠い存在になり、関心が薄れていけば、課題解決への取り組みも進まない。なんとか海への関心を呼び起こそうと動き出したのが、公益財団法人ブルーオーシャンファンデーションと一般社団法人Think the Earthだ。 今秋の刊行をめざし、両者は共同で、海と環境をテーマにしたビジュアルブック『あおいほしのあおいうみ(仮)』を製作している。今回対馬で取材した取り組みもこの本に掲載される予定だ。 「地球に海が誕生する歴史から海の生き物たちの生態、海と関わる人たちの仕事図鑑など、海についてもっと知りたい!という気持ちが芽生えるような本の構成になっています。まずは未来の担い手である子どもたちに、海に対する理解を深めてもらいたい」と、Think the Earth理事の上田壮一さんは言う。 Think the Earthはこれまで書籍やワークショップなどを通じ、社会や環境の問題を自分ごととして捉えてもらう活動を行ってきた。近年では、持続可能な社会をつくるための学びを実践する先生たちを支援する「SDGs for School」という活動に力を入れている。 2018年にはビジュアルブック『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』(紀伊國屋書店)を刊行。書店で販売するとともに、教材として学校に無償で本を届けるというユニークなプロジェクトを実施し反響を呼んだという。本を寄贈した学校は2023年度までに累計1600校に達している。『あおいほしのあおいうみ』でも同様に、学校への寄贈を行う計画だ。 「本が完成したら、教師や生徒たちが一緒に考える場作りやフィールドワークも実践したいと思っています」と上田さんは言う。 「『海と日本人』に関する意識調査」によれば、「海に関する情報を得ている」人は、「海を守る行動」への意識も高いという結果が出ている。『あおいほしのあおいうみ』を読んだ子どもたちが、海を守る行動につなげてくれることを願う。 小泉淳子(編集者)