【視点】「資産運用立国」へ環境整備を
石破茂政権の発足を受け、東京株式市場では9月30日、日経平均株価が急落し「石破ショック」と報じられた。翌10月1日の日経平均株価は大幅に回復したが、石破政権の経済政策に対する警戒感から、市場は不安定な状況が続いている。それは取りも直さず、成長軌道に乗り切れない日本経済の不安定さを示している。 石破首相は2日、全国証券大会にビデオメッセージを寄せ、岸田文雄前政権が打ち出した「資産運用立国」を継承する考えを改めて表明した。石破政権は一刻も早く市場の信頼を確立し、資産運用立国に向けた環境整備を進めてほしい。 岸田政権は2023年1月「資産運用立国実現プラン」を公表した。2115兆円に上る家計金融資産の半分以上を占める預貯金を投資に振り向けることで、企業活動の活性化と家計の金融所得向上を図り「成長と分配の好循環」を目指す施策だ。 日本経済は長期停滞が続き、勤労者の賃金が上がらず、個人消費の低迷が内需を押し下げる悪循環が続く。政府は「資産運用立国」を打ち出し、新しい少額投資非課税制度「新NISA」を創設するなど国民の投資を奨励。賃金以外の金融所得も増加させることで個人消費の活性化を狙う。 日本には投資を「投機」と捉える傾向が根強く、家計の余剰資金は、ほとんどが預貯金に回っている。ただ銀行預金は低金利が長期化し、預貯金だけで資産を成長させるのは不可能な状況だ。 政府が少額でも株式や債券に安定的に投資できる環境を整え、各家庭が保有する資産の長期的な成長を促進するのは、妥当な方向性だ。 ただ8月には日経平均株価が暴落し、特に投資初心者に冷や水を浴びせる結果となった。その後も株価は一進一退が続いている。 日米の政権や金融関係の重要人物による金利関連の発言が円安や円高を引き起こし、株価がそれに連動する現象が起きているようだ。 「石破ショック」は、石破首相が金利引き上げ容認や金融所得課税の強化に動くのではという予測から引き起された。首相は直後に火消しを図っている。 人口減少が続く日本では、成長企業のマーケットはどうしても海外に求められがちだ。だが輸出だけでは目の前の円安、円高で業績が左右されやすい。要人のちょっとした発言で株価の値動きも不安定になる。 海外だけでなく国内でも着実に「稼げる」企業や業種を育成すべきだし、その大前提として、個人消費を核とする内需の拡大を進めなくてはならない。 岸田政権は定額減税など国民の負担減につながる政策も打ち出したが、道半ばだった。防衛や子育て支援などを目的とした増税や社会保険の負担増も議論されているが、それが国民の窮乏化につながっては本末転倒だ。石破政権は「資産運用立国」の実現も含め、国民をいかに富ますかを第一に考えてほしい。