「自民党総裁選」大乱立なのに「公明党代表選」出馬は1人…「池田名誉会長」没後初の代表選に見る「公明党」衰退
ようやく切り出せた
「党代表は激務と言われています。山口さんもこんなに続ける気はなかったと思います。すでに一昨年の党大会で、定年の69歳を超えていましたから。しかし、創価学会、とりわけ上層部からの評価は抜群でした。『池田名誉会長の意向』と創価学会から言われれば、断ることもできなかったのでしょう。創価学会の実働部隊である女性部からも、その容貌と人柄で“なっちゃん”と慕われていましたしね。昨年、池田氏が亡くなったことで、ようやく山口さんから代表辞任を切り出すことができたのでしょう」 ならば、石井幹事長が代表となれば、公明党史上、池田氏の意向を受けていない初の代表となるのだろうか。 「そういうことになりますね。もっとも、石井氏は失言と発言力のなさが心配されています。彼は次期衆院選小選挙区の“10増10減”に伴う自民との選挙協力協議で調整力不足が露呈、しかもその際、『自公の信頼関係は地に落ちた』とまで言い放ち、連立関係が崩壊しかけました。また、講演会で『国土交通相の時代は熊本地震などあったが、一番の災害は森友事件』などと発言し、謝罪に追い込まれたこともありました」 石井幹事長とはどんな人物なのだろう。 「東京出身で東大工学部土木科を卒業。親も創価学会員で学生時代は『小学校に入る前から戸田(城聖)先生(1900~1958=創価学会2代会長)の講義を母の背中で聞いていた』と自慢していたそうです。学会エリートのような気持ちなのかもしれません」
党代表が落選の可能性も
東大から建設省(現・国土交通省)に入省し、93年の衆院選に中選挙区の旧東京5区から公明党公認で出馬して初当選。安倍内閣では国土交通大臣を務め、3年11カ月の在任期間は歴代最長、2020年からは公明党幹事長に就いている。 「初出馬の時はギリギリの3位当選で、それ以後は比例東京ブロックに移りました。元官僚ですから実務能力はあるのでしょうが、選挙に強いわけではない。地味な人なので学会女性部でもそれほど人気があるわけでもないようです」 ところが、次期衆院選では前述の“10増”のひとつである埼玉14区からの出馬が発表されている。 「公明党は国政選挙での比例得票数の減少に歯止めがかからない状況です。22年夏の参院選では800万票の目標を掲げましたが618万票に留まりました。小選挙区の候補を増やし、全体の議席数を維持しようというわけです。そのため、石井幹事長を小選挙区で勝たせた後に、山口代表から禅譲という筋書きを考えていたようです。ところが、岸田首相が衆議院を解散せず、自民党総裁選が先になってしまいました。おかげで公明党も、代表交代が先になってしまったのです」 小選挙区からは初出馬だが、党代表の身では選挙区に張り付いてもいられない。 「自民党とのパイプもない石井氏ですから、落選もあり得る。実際、09年の衆院選では太田代表も落選しているのですから、与党への逆風次第では、その可能性はあります。ましてや、池田名誉会長が亡くなって初めての総選挙ですから、学会員はどれだけ動いてくれるのか。学会の女性部から『池田先生の指名がなかった代表だから上手くいかなかった』なんて言われかねません」
デイリー新潮編集部
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