初対面の女性にいきなりネガティブトーク 愛されたいのになぜか孤独へと突き進んでしまう中年男性を描いた小説(レビュー)
佐原ひかり氏『スターゲイザー』(集英社)は、アイドル事務所に所属するデビュー前の若者たち「リトル」の6人を主人公にした連作小説である。夏のイベント「サマーマジック」で活躍をみせた者は、デビューが近いグループ「ラスオズ」の追加メンバーに選ばれるという噂が流れ、リトルたちは動揺する。同じ事務所に所属しているとは言え、そこにいる理由はさまざまだ。容姿も技術も個性も、残された時間も家庭環境も違う。自分にないものを持つ者に対する嫉妬と憧れ、将来への希望と不安、働き方への疑問……。登場人物たちは特殊な環境に身をおいているが、書かれている感情は多くの人が経験するものと似ているのではないだろうか。青年たちの輝きと、内側に隠している影の部分が、たまらなく眩しくて愛おしい青春小説だ。 [レビュアー]高頭佐和子(書店員。本屋大賞実行委員) 都内書店にて文芸書を担当 協力:新潮社 新潮社 小説新潮 Book Bang編集部 新潮社
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