神戸製鋼と宝武鋼鉄、車用アルミパネルで協業検討。中国で年内の合弁設立目指す
神戸製鋼所は、宝武アルミ業科技(宝武アルミ)との協業検討で中国における自動車用アルミ板販売を強化する。宝武アルミの溶解・圧延工程を活用し、中国国内から自動車パネル用母材を調達・スクラップ利用できる体制を整える。競合で生産能力を伸ばしているノベリスや南山アルミ業(南山アルミ)などに対し、神鋼・宝武の2社連携で販売拡大を目指す考え。 景気停滞が指摘される中国だが、電気自動車を含む新エネルギー車(NEV)市場は拡大傾向にあり、中国の自動車用アルミ板市場も2025年に100万トンに達するという予測もある。このような市場において、神戸製鋼は16年4月から天津で自動車用アルミ板の仕上げ拠点が量産を開始。年産能力は10万トンで、米ノベリスに次ぐ2番目の地位を固め、電気自動車市場の拡大に向け準備していた。 しかしながら近年は、カーボンニュートラルの実現に向けて、中国の自動車メーカーが圧延メーカーにスクラップ材の活用を要求するケースが増加。特に要望の強い自動車材の水平リサイクルでは、自動車メーカーの工場などで発生した端材を回収して再溶解するなど、圧延一貫工程が必須だ。 このような課題に対して、競合のノベリスは20年に米アレリスを買収し、旧アレリス鎮江工場(江蘇省)に冷間圧延ラインとリサイクルセンターを増強。蔚山工場(韓国)から常州工場(江蘇省)の仕上げラインに供給していた母材を鎮江工場に切り替えることで、いち早く中国での水平リサイクルを実現した。また中国現地系メーカーはほとんどが一貫ラインのため、水平リサイクルの準備は整っている。 一方で、一貫ラインではない神戸製鋼が水平リサイクルを実現するには中国国内の協力者が必要とされていた。また従来の日本や韓国からの母材供給では関税や物流の観点から競争力を欠くなどの課題もあった。こうした複数の背景からパートナー会社の選定を進めていた。 今回本格的な協議を始めた宝武アルミは、10年代後半にアルミ圧延業に進出した後発メーカー。アルミ板の年産能力は30万トンで、自動車用アルミパネルは年8万トン製造できる能力を持つ。23年には熱間仕上げ圧延機のスタンド増設(4スタンド化)投資を決めるなど勢いはあるが、アルミ板の熱処理や表面処理技術では、先発メーカーを追う立場。品質優位性を持つ神戸製鋼とは互いの不足を補える組み合わせとみられる。 しかし神戸製鋼は今回の協業での実を取るため、宝武アルミ母材の品質安定化が不可欠。真岡や蔚山(ノベリスと合弁)母材レベルの安定を実現できなければ、天津拠点の〝能力比フル稼働〟が遅れることになる。 現在の中国自動車用アルミパネル市場は競争が激化している。首位のノベリスが年20万トンの能力を持つほか、南山アルミは22年に販売数量が12万トンを記録し、現在は能力を年40万トンまで引き上げる投資を実行中。宝武アルミのような後発メーカーも後を絶たない。ハイエンド市場をターゲットとする神戸製鋼だが、宝武アルミとの協業で顧客のリサイクル材要求に応えられれば、中国市場で存在感を発揮できることになる。