トラックの「プシュッ音」はブレーキの作動! 乗用車の「油圧」とは違う「エアブレーキ」って何?
空気圧を利用してブレーキをかける
クルマのブレーキは、ほかのどの装備よりも大切だ。エンジンや変速機、駆動系が故障しても「走れない」という事態に陥るだけ(ごく稀に暴走する、ということもあり得なくはないが……)で済むが、ブレーキが故障すればぶつかるまで止まらない)という、恐怖の状態に陥るのだ。 【画像】中型以上のトラックに採用されているエア式ブレーキ そのため、乗用車では油圧式ブレーキを採用しているだけでなく、フェードに強いディスクブレーキを採用し、ペダルの踏力を増幅するブースター、ホイールロックを防止するABS、スピンしたりコントロール不能になることを抑えるESC(横滑り防止装置)など、ブレーキ装置には多彩な機能が盛り込まれている。 最近では不整地での空転を防ぐデフロック的な使われ方までしているブレーキだが、トラックだってブレーキの使い方の複雑ぶりは負けていない。乗用車や小型トラックの油圧式ブレーキは繊細な操作を反映しやすく、反応も鋭いから、比較的小さなボディのクルマには向いている。一方、中型トラック以上の車両にエア式のブレーキ(ブレーキペダルを操作した時にプシュッと開放音が鳴る)が採用されているのは、圧縮空気のほうが大きな力をたくさんの方向に供給しやすいからだ。 また、大型や中型トラックなどのなかにはブレーキペダルからサスペンションまでは空気圧を使い、ホイール内側付近で油圧に変換して作動する空気&油圧複合式のブレーキを採用しているところ(日野自動車など)もある。 ちなみに完全なエアブレーキは、圧縮空気の特性から微妙な操作がしづらく、操作に慣れるまではスムースに走らせることが難しいことが知られている。
トレーラーの構造からエアブレーキが採用される
大型トラックでもトレーラーの場合、トラクター(動力のある車両部分)とトレーラー部の断続を即座にできるようにするとなると、まず油圧式では難しい(ジョイント部分の工夫でできない訳ではない)という構造上の問題もある。 たくさんの車軸にブレーキを装備し、それらを制御するための圧力を伝達するものとしては、油圧ではなく空気のほうが都合がいいのだ。それに油圧の場合、定期的にブレーキフルードの交換が必要になり、また劣化して水分を含むとベーパーロック(ブレーキフルード内の水分が沸騰して、ブレーキの圧力を吸収してしまう)を起こしやすくなるから、ブレーキまわりで高熱を発生しやすいトラックには、やや不利なのである。 トラックのブレーキ装置にもABSはもちろん、ESCの採用も進んでいる。さらにトラックならではの制御として、トレーラーの急ブレーキ時にはリヤブレーキの作動を早めることでジャックナイフ(車体が折れ曲がって、トレーラーがトラクターを押してコントロール不能になってしまう状態)を防止する機能も盛り込まれているシステムもある。 そんなエアブレーキでもブレーキを作動している状態がデフォルトであり、エア圧でブレーキを解除するように動くタイプもある。これはフルエア式と呼ばれ、大型トラックやトレーラーなどに採用されている。エアブレーキの場合、パーキングブレーキもエア圧で、ブレーキを解除しながら走っている状態となっているのだ。
トラック魂編集部