「お母さんは、人生楽しんでます?」 やればできる子なのに…と、嘆く親に感じる違和感
中学受験させて、いい教育環境を用意しても、そこで成長できるかどうかは子ども次第。好奇心を持たせるにはどうしたらいいのでしょうか。そうしたリアルな悩みを聞いてくれるのは「ビリギャル」として知られ、現在はアメリカのコロンビア大学教育大学院で学ぶ小林さやかさんです。親世代に伝えたいアドバイスとは? 【写真】「スカラシップ」で授業料が半額に ひとり暮らしの家賃は4.5万円、バイトは時給970円
【質問】
娘が中学受験で第1志望の学校に入学して2年。努力家で勉強もできる子なのに、最近は「低空飛行」の努力しかしなくなり、学校の成績はそこそこです。部活にも熱心でなく、特色あるイベントにもあまり参加しません。小学生のときは「留学したい」とも言っていたのに、今は興味がないようです。長期休みはずっと家にいて、YouTubeを見たり、小学校時代の友達と遊んだりしています。せっかくの中高一貫校なのに、環境を生かしているかというと疑問です。最近の大学受験は推薦入試が多いと聞くので、そのためにもいろいろな経験をしてほしいと思うのですが、親の言うことを聞くとも思えません。中学生が興味の幅を広げる活動のヒントがあればお願いします。(母親・44歳・東京都在住)
【回答】
まず、「お母さん自身はどんな学生時代を過ごしましたか?」って聞いてみたい。すごく有意義だったのか、あるいはやりたかったことをかなえられなかったのか。「自分ができなかったことをさせてあげたい」「子どもに幸せになってほしい」と思う気持ちはわかりますが、娘さんはお母さんとは違う人間です。時代も学校も家庭環境も異なる別の人間なんですよね。 そもそもモチベーションっていうのは、「本人が」心底それをやりたいと思うか、もしくはちょっとそのときは嫌でも、頑張ってそれをやった先の自分の未来に「本人が」十分に価値を感じている場合にしか湧きません。 私は大学院の夏休みに、バックパックひとつで2カ月半ほどヨーロッパを巡りました。そのときによく出会ったのが、ギャップイヤーを使って旅したり、アルバイトやボランティアをしたりしている学生たちでした。ギャップイヤーとは多くの欧米の大学生が経験する「gap=隙間、余白」となる時間のこと。入学前に取る学生も多く、この間に学生たちは自分の興味関心がある分野を見極めているらしいのです。そしてそれが見つかってから大学を選んだりする。合理的ですよね。日本では履歴書に穴を開けるような浪人や休学は良くないことだと思う人が多いですが、海外ではギャップイヤーを取らないと「え、なんで取らないの? 大丈夫?」と逆に心配されるらしいです。 つまり、日本人にはもう少し余白が必要なんじゃないかということ。第1志望に受かるだけの努力をした娘さんは、中学受験で燃え尽きてしまった部分もあると思います。でも、その後も余白が許されないとしたら、何だかずーっとマラソンを走っているみたい。そんなの、大人だってキツくないですか? お母さんは大学入試のこともすでに調べているし、教育に対する関心がかなり高いのだと思います。でも、娘さんがちょっとそれについていけていないかも…。友達もいるし、勉強もそこそこやっているとのことなので、娘さんは今も十分に頑張っていると思います。 粗探しをするんではなく、娘さんのここがすごいなあっていうところとか、「わ! 成長してる!」っていうところとか、宝探しを楽しむ感覚で見てあげてほしいな。