「本当に普通の主婦だったんですけどね、ご縁があって」45歳でワイン醸造家に転身した女性の波乱万丈
友人のすすめで、いきつけの飲食店のパートへ
数年間、家業に精を出した須合さんでしたが、義父母が高齢になったことから家業を畳むことに。ちょうどその頃、友人とよく訪れていた飲食店でアルバイトを募集していることを知ります。 「飲食店でパートを募集していることを友人が教えてくれたんです。『あなた時間あるでしょ。やってみたら?』って(笑)。お店で働いている人の実直な雰囲気が好きだったので、応募してみたんですよね」 このとき選んだ勤務先こそが、現在の葡蔵人~Book Road~の母体である「K'sプロジェクト」が運営する飲食店でした。
社長に直談判し、パートからワイン醸造家へ
家業での接客経験を活かして、店を訪れる人を精一杯もてなしていた須合さん。義母と同じように「このお客様は何をしたら喜んでくれるだろう」と考え、お客さんの名前を覚えて積極的にコミュニケーションを図るなどしていたスタッフの真摯な姿に、毎日刺激を受けていました。 そんなある時、社内にワインの醸造を行う新規事業の立ち上げ話が。「情報が解禁されたら、お客さんにもお話できるし…」という興味本位で、須合さんは社員に詳細を尋ねてみました。 もともとものづくりに興味があったこともあり、詳細を聞けば聞くほど魅力を感じた須合さん。加えて、スタッフたちの情熱や真面目な働きぶりに胸を打たれていたこともあり、「この会社の人たちともっと一緒に働きたい」という気持ちがどんどんと募っていきました。 「ワクワクが止まらなくなった私は、勤務先に顔を出しに来た社長に『醸造家に立候補したいです』と名乗り出ました。パートという立場だったのに、よく思い切りましたよね(笑)。社長もとても喜んでくれて、『一緒にやろう!』と言ってくれました」 ワイン醸造という未経験の分野に飛び込むことを決意した当時、須合さんは45歳。年齢を理由にして新しいことにチャレンジすることに躊躇してしまう人は多いですが、須合さんは全くそう思わなかったといいます。 「だってやったことがないのに、最初からできないって言うなんてもったいないじゃないですか。せっかくやりたいことを見つけたんだから、やってみたらいい。やったほうが後悔がないでしょう?それにこの会社の人とする仕事なら、どんなことでも楽しいんじゃないかって思ったんです」 周りの家族や友人は、挑戦を始める須合さんにどんな反応を示したのでしょうか。 「家族は特に、何も言いませんでした。反対だったらきっとなにか言ってくるだろうし、心配しながらも応援してくれていたんだと思います。友人も『頑張ってね』という感じ。私が一度決めたら曲げない性格だということを知っているので、『無理しないでね』という感じでしたね」 須合さんは「もし作り始めるものがワインではなくチーズだったとしても、きっと新規事業責任者の候補に挙手していたと思う」と笑いながら話します。”一緒に働く人”をモチベーションに、須合さんは人生の新しい一歩を踏み出し始めました。 前編記事では須合さんがこうしてワインづくりに踏み出すまでを教えていただきました。後編記事では須合さんが実際ワインを作ってみたら起きた「意外なできごと」や気づきを語ってもらいます。
ライター 市川みさき